“想像以上”はどう生まれる? 〜ニーズから一歩踏み出すアイデア発想の技法〜

釜剛史

釜剛史

テーマ:壁を越えるイノベーション実践録

「顧客の声に応えているのに、他社と差がつかない」
「“ニーズ対応”だけでは、小さくまとまってしまう」

新規事業や商品開発の場面で、よく聞く悩みです。

確かにニーズに応えることは大切ですが、
“期待通り”では差別化できないのもまた事実。

必要なのは、「こんな方法があったとは!」と驚かれる
“想像以上”の提供価値です。

今回は、その“想像以上”を生み出すための発想法について考えてみましょう。



ニーズ対応の“限界”

ニーズを聞いて真面目に応えた結果、
「便利になった」「使いやすくなった」と評価されることはあります。

しかしそれは、あくまで現状の課題を解決したにすぎない状態。

「なくても困らない」程度の改善では、
競合にすぐ追いつかれ、模倣されて終わってしまう危険性があります。

“想像以上”は、ニーズからは生まれない?

「こんなものが欲しい」と言われたものを
そのまま形にしても、サプライズは生まれません。

では、“想像以上”を生み出すには何が必要なのでしょうか?

答えは、「ニーズから一歩踏み出す視点」です。

技法①:ニーズの“奥にある願望”を探る

「楽になりたい」「早くしたい」—
その奥には何があるでしょうか?

  • 「仕事を早く終えて、家族との時間を大切にしたい」
  • 「人前で緊張せず、自信を持ちたい」
  • 「お客様に感謝され、やりがいを実感したい」

“目的の目的”を深掘りすることで、提供すべき価値が変わります。

技法②:「〇〇しながら△△する」を考える

組み合わせによって「新しい体験」を生み出す手法です。

  • 食べながら健康管理できる食品
  • 働きながら学べるオフィス制度
  • 移動しながら休息できるモビリティ

単体では珍しくない要素も、「掛け算」することで価値が跳ね上がるのです。

技法③:「逆張り」をあえて考える

「普通はこうする」に対して、あえて逆を考えることで
ブレイクスルーが生まれることがあります。

  • 「駅前でなく、山奥にあるカフェ」
  • 「24時間営業しないコンビニ」
  • 「メニューがないレストラン」

“なぜそれをやるのか”が明確であれば、
それは単なる奇をてらった戦略ではなく、独自性ある価値になります。

ケース紹介:既存の価値に“ひと手間”を加えた成功例

ある建材メーカーでは、
営業チームが「工務店の困りごと」をヒアリングしながら、
ニーズに応える製品を長年提供してきました。

しかし、差別化が難しくなり悩んでいたとき、
“逆転の発想”で生まれたのが—

「家づくりで後悔しないための情報をまとめた無料冊子」の配布。

製品を売る前に、顧客の“不安”を解消することで、
“この会社は信頼できる”という印象を与え、受注率が飛躍的に向上しました。

これはまさに、ニーズではなく“願望”に応えた好例です。

“想像以上”は、創造のマインドセットから

  • 常識を疑う
  • 遊び心を持つ
  • 一見ムダに見える実験もやってみる

こうした姿勢が、“予想の外側”へ踏み出す力になります。

まとめ:ニーズを超えて「驚きと感動」を設計する

  • ニーズの奥にある「願望」に着目する
  • 異なる価値を“掛け合わせる”視点を持つ
  • あえて逆を突くことで独自性を生み出す




壁を越えるイノベーション実践録(40/50)

次回予告:
「最小で最大の一歩」を踏み出すには?

〜MVP(Minimum Viable Product)で見える、本当に必要な価値〜

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釜剛史
専門家

釜剛史(イノベーションコンサルタント)

株式会社あくるひ

企業研修、コーチング、技術経営コンサルティングの三つのアプローチでイノベーションを実践的に支援。富士写真フイルムやトヨタ自動車での実体験を基に、「横から目線」でクライアントの愉快創造を活性化します。

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