「言っても変わらない」の壁を越えるには 〜“組織のあきらめ”に火を灯す方法〜
「現場にヒアリングしてニーズを聞いたけれど、
どれも小粒な改善ばかりでワクワクするようなアイデアが出てこない……」
そんな経験、ありませんか?
実はこの現象、社内ヒアリングの“ある構造的な罠”に起因していることが多いのです。
ニーズは聞いた。でも、アイデアにならない理由
「何か困っていることはありますか?」
「もっとこうなったらいいな、ということは?」
こうした問いは一見、建設的に思えますが、
実際に返ってくるのは—
- 「もう少し〇〇のレスポンスが速くなってほしい」
- 「レポートが自動化されたら楽になる」
- 「通知が見やすくなれば……」
といった、“今ある課題”の延長線上の改善案ばかり。
もちろんそれも大切ですが、
イノベーションにつながる“ブレイクスルー”は、ここからは出てきにくいのです。
落とし穴①:課題は“語られるもの”とは限らない
現場の人ほど、今のやり方に慣れています。
そのため、そもそも課題として意識されていない“埋もれた不”に気づきにくいのです。
「こんなもんだと思ってた」
「昔からずっとこのやり方なので…」
本質的な課題ほど、“言葉にならない”のが現実です。
落とし穴②:聞かれた側も“聞かれ慣れていない”
「何か意見ありますか?」と言われて、
すぐに斬新なアイデアを語れる人は多くありません。
- 「ちゃんと考えてないと思われたらどうしよう」
- 「的外れなことを言ったら恥ずかしい」
という心理が働き、安全な“当たり障りない案”が出やすくなります。
解決の鍵は、“観察”と“問い直し”
1. 言葉ではなく「行動」に注目する
- 誰が、どこで、どんな順序で、どんな工夫をして作業しているか?
- 何にストレスを感じ、どこで手が止まっているか?
行動を“観察”することで、本人すら気づいていないニーズが見えてきます。
2. 「なぜ?」を3回問い直す
「レポートが面倒です」→なぜ?
「手入力が多くて時間がかかる」→なぜ?
「複数のシステムに同じ情報を打ってる」→なぜ?
「統合されていないから」
—ここでようやく、本当の課題(システムの分断)にたどりつけます。
ケース紹介:使われないツールの“本当の課題”
ある製造業では、現場スタッフの声を反映して導入した
業務支援アプリが、ほとんど使われていませんでした。
ヒアリングでは「便利なんだけど、つい忘れてしまう」といった表面的な意見ばかり。
そこで、実際の作業風景を“観察”してみたところ—
「現場にスマホを持ち込むことが禁止されている」
というルールの存在が明らかに。
つまり、「便利・不便」以前に、使える環境が整っていなかったのです。
ヒアリングを“共創の場”に変えるには
単に「聞く」だけでなく、一緒に考える場に変えることが重要です。
- 実際に試作を見せて反応をもらう
- 困りごとをホワイトボードで可視化しながら整理する
- 「どこが一番面倒か」を一緒に順位づけする
こうしたプロセスの中で、現場の人たちも“気づきの当事者”になります。
まとめ:ヒアリングは「問い方」と「見方」で化ける
- ニーズは“語られないこと”のほうに本質がある
- 行動の観察と「なぜ?」の深掘りが核心をあぶり出す
- 一緒に考えることで、共創的なアイデアが生まれる

壁を越えるイノベーション実践録(39/50)
次回予告:
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