“現場が動かない”のは誰のせい? 〜リーダーとメンバーの“認識ギャップ”を埋める方法〜
「いい商品なのに、なぜ売れないのか?」
開発チームは苦労して、確かな技術と機能を備えた新商品をつくった。
にもかかわらず、思ったほど売れない。顧客の反応も鈍い。
「なぜ?」「どこがズレていたのか?」
これは多くの現場で起きている、“価値の伝わらなさ”の問題です。
「価値」は、作り手ではなく“受け手”が決める
このような“すれ違い”は、プロダクトアウト的な発想に陥ったときに起こります。
つまり、「いいモノを作ったのだから売れるはずだ」という思い込み。
けれど、ユーザーにとっての“価値”とは、
自分の困りごとを解消し、期待を満たしてくれるもの。
その視点に立ち返るためのフレームが、
「バリュープロポジションキャンバス(VPC)」です。
「顧客の視点」と「提供価値」を重ねるフレーム
バリュープロポジションキャンバスでは、以下の2つを対比して構造化します:
<顧客プロファイル(Customer Profile)>
- Jobs(やりたいこと):顧客が達成したい目的・課題・日常業務
- Pains(困りごと):顧客が感じている不満・不安・障害
- Gains(得たいもの):顧客が求める利益・理想の状態
<提供価値マップ(Value Map)>
- Products & Services:自社が提供する製品やサービス
- Pain Relievers:顧客の困りごとを和らげる方法
- Gain Creators:顧客に利益・喜びをもたらす要素
この2つを“照らし合わせる”ことで、
顧客のニーズと、提供する価値のフィット感を検証できるのです。
ケース:プロ向け洗剤の商品開発
ある化学品メーカーが、プロの清掃業者向けの高性能洗剤を開発。
機能的には申し分なく、他社製品よりも汚れ落ちが良い――
にもかかわらず、販売が伸び悩んでいました。
バリュープロポジションキャンバスを使って洗い出してみると:
- Jobs:素早く多くの現場をこなしたい
- Pains:洗剤が強すぎると手荒れする/後処理が面倒
- Gains:疲労感を減らし、効率よく作業したい
→ 自社製品は「汚れ落ち」は良くても「使いやすさ」「安全性」への言及がなく、
「むしろ強すぎて使いにくい」と見なされていたことが発覚。
この気づきを受けて、「手荒れしにくく、泡切れが良い」という特性を前面に出すことで、販売が急伸。
「現場にやさしいプロ向け洗剤」としてポジショニングが明確になったのです。
「ズレ」を見つけることで、価値が磨かれる
VPCの本質は、“完璧にフィットさせる”ことではありません。
むしろ、ズレを可視化することに価値があります。
- 顧客が困っていることに対し、自社は本当に価値を提供できているか?
- 自社が強調している価値は、顧客にとって本当に“嬉しい”のか?
この問いに、誤魔化さずに向き合うことが、
イノベーションの起点になります。
まとめ:「価値」を“すり合わせる”目を持つ
- 良い商品 ≠ 売れる商品
- 顧客のジョブ・不満・期待を可視化することで、価値の再発見ができる
- バリュープロポジションキャンバスは、“売れない理由”を言語化する武器になる

壁を越えるイノベーション実践録(37/50)
次回予告:
プロトタイプが動かすチーム
〜形にしてみて初めて見える“本当の課題”〜
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