社内ヒアリングの“落とし穴” 〜ニーズを聞いても、いいアイデアが出てこない理由〜
「いいと思ったのに、なぜ通らないんだろう?」
現場で生まれた新しいアイデアや企画が、会議で一蹴されてしまう。
「うちの方針とズレている」「前例がない」「リスクが高い」……。
本気で良いと思って提案したアイデアが、なぜこんなにも通らないのか?
その背景には、「マネジメントとの連携不足」という大きな壁があります。
組織の中では、「よいアイデア」だけでは進まない
イノベーションの初期段階は、たいてい組織のルールや方針から“はみ出す”ものです。
マネジメント層は、そのアイデアに対して「売上は?」「実現可能性は?」「組織との整合性は?」といった視点で判断します。
一方で、現場で動いている人は、「困っている人を助けたい」「新しい価値を作りたい」という思いで動いている。
この“視点のズレ”を埋めないまま進もうとすると、必ず摩擦が起き、企画は止まってしまいます。
「巻き込む」のではなく、「共に見る」
マネジメントと連携するために大切なのは、「説得する」ことではなく、
同じ方向を“共に見る”ことです。
そのための3つのポイントを紹介します。
① 経営の“問い”と接続する
「そのアイデアは、会社にとってなぜ重要なのか?」
経営層が抱えるテーマや課題(例:持続可能性、人材活用、新市場開拓など)と接続させて語ると、アイデアの意義が伝わりやすくなります。
② 仮説・検証型で見せる
「完璧な事業計画」ではなく、「こういう仮説を検証している」という段階の共有。
“進め方が見える”ことで、マネジメントの不安を減らし、応援されやすくなります。
③ 「やりたい人」の顔を見せる
どんな人が、どんな想いで取り組んでいるのか。
「人」を見せることで、アイデアへの信頼が増します。特に初期段階では、“人の熱意”が、企画の可否を左右することが多くあります。
ケース:現場発の新サービスが承認された背景
ある中堅メーカーで、若手社員が現場の声を元にしたサブスクリプション型サービスを企画。
しかし、初回の企画会議では「うちの顧客には合わない」「リスクが高い」と却下されました。
そこでチームは、以下の工夫を行いました:
- 顧客の声と、経営方針である「継続的な収益モデルへの移行」を接続
- 3ヶ月間でPoC(試験的導入)を行い、成果とフィードバックをデータで可視化
- 担当メンバーが「なぜこのサービスを作りたいのか」を自らの言葉で語る場を設けた
結果、経営層も「意義がある取り組みだ」と認識を改め、社内稟議が通過。
現在では、同社の新たな収益柱として成長しつつあります。
「組織の論理」を、味方につけよう
現場視点のアイデアは、ときに組織の“異物”として見られます。
けれど、マネジメントの論理を「敵」ではなく「対話すべき視点」と捉えることで、
新しい動きが組織の中に“根を張る”可能性が高まります。
まとめ:上を“動かす”のではなく、“巻き込まれる構造”をつく
- イノベーションは、現場だけでなく、組織全体の連携で育つ
- マネジメントとの視点のズレを理解し、丁寧に“つなぐ”努力をする
- 大事なのは、「共に見る構造」を早期に作ること

壁を越えるイノベーション実践録(36/50)
次回予告:
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