「“いいアイデアが浮かばない…”はどう乗り越える?」 〜創造的思考のブレーキを外す“3つの問い”〜

釜剛史

釜剛史

テーマ:壁を越えるイノベーション実践録

新商品や新事業の企画会議。

ホワイトボードを前に、メンバーが静まりかえっている。
「何かアイデアある人?」と促されても、誰も口を開かない。
やっと発言が出たかと思えば…

「それって前にも出たよね」
「ちょっと現実味がないな」
「で、それ誰がやるの?」

—こうして場が凍りつく。

「いいアイデアが浮かばない」のではなく、
「浮かんでいても言えない」「自分で否定している」のが実態かもしれません。

今回は、そんな“創造性のブレーキ”を外すための3つの問いをご紹介します。



ブレーキ①:「失敗したらどうしよう」という不安

→ 問い:「最悪、どうなる?」


アイデアを出すときに心の奥にあるのは、失敗への恐れです。
しかし、あえて「失敗した場合、何が起こる?」と想定してみると、
実は想像より深刻ではないことが多いのです。
例:

  • 「社内で笑われるかもしれない」
  • 「一部の予算が無駄になるかもしれない」


この“最悪”を可視化することで、不安が現実的なサイズに小さくなり、動きやすくなるのです。

ブレーキ②:「前例がない」ことへの躊躇

→ 問い:「もし、何でもできるとしたら?」


この問いは、“前例”や“制約”に縛られた思考から自分を一度解放するためのものです。
現実的かどうかを一旦横に置き、「理想形」や「やってみたいこと」を妄想的に描くことが、突破口になります。
例:

  • 「お客様と24時間つながっていられる商品って?」
  • 「店舗ゼロで成立するサービスって?」


そのままは実現できなくても、そこにヒントが潜んでいることがよくあります。

ブレーキ③:「いいアイデアを出さなきゃ」というプレッシャー

→ 問い:「もっとダメな案は?」


あえて“質の低い案”を出してみるというのは、場の空気を和らげる非常に有効な手段です。

  • 「予算100倍かけて失敗するには?」
  • 「逆に、お客様が絶対に買わない商品って?」

こうした“逆転アイデア”や“ダメ案”が、笑いを生み、参加者の心をほぐし、そこから思わぬ良案につながることが少なくありません。

ケース紹介:3つの問いが場を変えた

ある企業の新商品企画チームで、アイデアが出ずに停滞していた会議がありました。

ファシリテーターである私が「“もっとダメな案”を出しましょう」と提案したところ、ある若手社員が手を挙げて一言。
「じゃあ…“使えば使うほどストレスがたまる健康アプリ”とかどうですかね?」

場は爆笑に包まれました。

その冗談をきっかけに、「逆にストレスを和らげる要素って何だろう?」と話が進み、
結果として、“1日3分だけでリセットできる”という新しいコンセプトのアプリが生まれました。

創造性は、笑いと安心の中でこそ育つのです。

まとめ:「いいアイデア」とは、出すものでなく育てるもの

  • アイデアの芽を潰すのは、「否定」や「不安」のブレーキ
  • ブレーキを外す“3つの問い”を日常に取り入れること
  • 「いいアイデア」は、最初は「へんな案」から始まることも多い




壁を越えるイノベーション実践録(35/50)

次回予告:
なぜ、アイデアは“社内で潰される”のか?

〜イノベーションを進めるための「マネジメントとの連携」〜

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釜剛史
専門家

釜剛史(イノベーションコンサルタント)

株式会社あくるひ

企業研修、コーチング、技術経営コンサルティングの三つのアプローチでイノベーションを実践的に支援。富士写真フイルムやトヨタ自動車での実体験を基に、「横から目線」でクライアントの愉快創造を活性化します。

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