“それ、もう他社がやってるよ”にどう向き合う? 〜後発だからこそ生まれる差別化の視点〜

釜剛史

釜剛史

テーマ:壁を越えるイノベーション実践録

新しいアイデアをチームで共有したとき、こんな一言を浴びせられた経験はありませんか?

「それ、もう他社がやってるよ」
「今さら感ない?」
「新しさが足りないなあ…」

この言葉に、思わずひるんでしまった方も多いはず。
ですが、後発=負けとは限りません。

むしろ、「後発であること」こそが、差別化と進化のチャンスになることもあるのです。


新規性は「切り口」で決まる

アイデアの価値は、“先に思いついたかどうか”ではなく、どう切り取って実現するかにかかっています。
同じ商品ジャンルでも、

  • 顧客層の選び方(子ども向け・高齢者向けなど)
  • 提供方法(定期便・サブスク・アプリ連携など)
  • 付加価値(世界観・ストーリー・体験設計など)

によって、まったく異なる価値提案になります。

たとえば、「オンライン学習サービス」というジャンルは飽和していますが、

  • 「5分だけ学べるマイクロラーニング」
  • 「親子で一緒に学ぶ共育アプリ」
  • 「学習後に“実践コーチ”がつく伴走型」

といったように、切り口を変えるだけで、独自性を打ち出すことが可能です。

ケース紹介:後発ブランドがシェアを奪った瞬間

ある飲料メーカーが、すでに大手がひしめく「炭酸水市場」への参入を決断したとき、社内には懸念がありました。

「もうやってる会社ばかりじゃないか」
「価格競争に巻き込まれるだけでは?」

しかし、その企業は市場をよく観察し、次のような「後発の強み」に着目しました。

  • 味や機能ではなく、「ラベルのないデザイン性」を前面に
  • プラスチック使用量を減らした「環境配慮型」
  • オフィス向けに「常温でも飲みやすい口当たり」

結果として、“サステナブル”と“おしゃれさ”を両立した炭酸水として支持を集め、都市部を中心に急速に販路を広げました。

後発だからこそ、市場に残された“空白”を見つける視点が生まれたのです。

後発の3つの強み

1. 先行事例を分析できる

他社の失敗や成功のパターンを見られるというのは、大きなアドバンテージです。
「どこでつまずいたのか」「なぜ支持されたのか」を参考に、最短距離で差別化に踏み出せます

2. 市場に“新しい文脈”を加えられる

同じ機能でも、時代や社会背景が変わると、まったく違う文脈で受け取られます。
例:

  • コーヒー × 健康
  • 美容 × フードロス
  • 教育 × メタバース

「今だからこそ響く切り口」は、後発のほうが柔軟に見つけられるのです。

3. 顧客との関係性を“最初から”デザインできる

先行企業が築いてきた文脈があるからこそ、
逆に「こうありたいブランド体験」を逆算して設計しやすくなります。

「二番煎じ」という呪縛から抜け出そう

日本の現場では、「オリジナリティがないとダメ」と思い込みがちです。
でも、AppleもGoogleもAmazonも、“最初に始めた企業”ではありません。

重要なのは、「自分たちだからこそできる視点」で届けること。

まとめ:「後発の強みは、“選べる立ち位置”にある」

  • 他社の失敗や成功から学べる
  • 今の時代に合った切り口を探せる
  • 顧客との接点をゼロから設計できる




壁を越えるイノベーション実践録(34/50)

次回予告:
「“いいアイデアが浮かばない…”はどう乗り越える?」

〜創造的思考のブレーキを外す“3つの問い”〜

「自社ならではの切り口を見つけたい」「後発で差をつけたい」といったテーマでのワークショップや企画会議ファシリテーションも承っております。
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釜剛史
専門家

釜剛史(イノベーションコンサルタント)

株式会社あくるひ

企業研修、コーチング、技術経営コンサルティングの三つのアプローチでイノベーションを実践的に支援。富士写真フイルムやトヨタ自動車での実体験を基に、「横から目線」でクライアントの愉快創造を活性化します。

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