「アイデアを育てる“壁打ち”の技術」 〜1人で考えない商品企画の進め方〜

釜剛史

釜剛史

テーマ:壁を越えるイノベーション実践録

「何かアイデアを考えておいて」

そう言われて机に向かい、うんうん唸る。でも、なかなか出てこない。
仮に出たとしても「これで本当にいいのか」と自信が持てない…。

そんな風に、商品やサービスの企画を“1人で抱えてしまう”人が少なくありません。

けれど、イノベーションは“孤独な思考”の中からではなく、対話の中から生まれることが圧倒的に多いのです。



「壁打ち」は、発想を磨く最強の手段


「壁打ち」という言葉は、もともとテニスの練習用語です。

しかし、ビジネスの世界では「アイデアや考えを他者にぶつけて、フィードバックをもらいながら整理する作業」を指します。

壁打ちの良いところは、発想を他人の目で検証できること

自分の中にある「思い込み」や「抜け」や「過剰な期待」に気づくきっかけになります。

アイデアの壁打ちに最適な相手とは?

1. 利害関係のない人

→ 気を遣わず率直に話せる。思い切った問いやツッコミが得られる。

2. 顧客に近い視点を持つ人

→ 「それ、私だったら使いたいかも」など、具体的な使用イメージを引き出せる。

3. 実行側(技術・現場)の人

→ 実現可能性についてのヒントや、落とし穴を早期に見つけてくれる。

4. 「問い返し」が上手な人

→ 一方的な評価ではなく、「なんでそう思ったの?」「他の選択肢は?」と思考を深める問いが返ってくる。

ケース紹介:アイデアの“深掘り”で売れ筋商品に

ある食品メーカーの若手企画担当者が、冷凍スープの新商品を提案しました。

最初は「具だくさん」「ヘルシー」「電子レンジでOK」など、よくある切り口にとどまっていましたが、壁打ちの中で以下の問いが投げかけられました。

  • 「どんな人にとって、どんな場面で嬉しいの?」
  • 「朝食にこれを選ぶ理由って?」
  • 「具だくさんの“具”って、何が入ってたら嬉しい?」


対話を重ねる中で浮かび上がったのは、「朝から野菜を取りたいけど、時間がない共働き世帯」のニーズ。

結果、「レンジで90秒、1食分の1/2日分の野菜」という新しい切り口が生まれ、大手スーパーで売上上位に。

アイデアは“出す”ことより、“育てる”ことのほうが大事なのです。

壁打ちが機能するために必要な3つの要素


1.安心して話せる関係性
 →心理的安全性がなければ、本音が出ない。
2.目的を共有すること
 →評価のためではなく、「より良くするため」の対話であると最初に確認する。
3.“問い返し”を恐れないこと
 →反論やツッコミではなく、探究を深めるための問いとして受け止める。

まとめ:壁打ちで、アイデアは磨かれる

  • 孤独な発想には限界がある
  • 対話の中で、自分のアイデアの“盲点”に気づける
  • 壁打ちを重ねることで、アイデアは顧客視点の「提案」に進化する




壁を越えるイノベーション実践録(31/50)

次回予告:
「“ターゲット不明”の商品は誰にも届かない」

〜ペルソナ設定で、届けたい相手を明確に〜

商品企画や新事業アイデアの壁打ちをしたい方、コーチング形式での支援も行っています。
どうぞお気軽にご相談ください。

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釜剛史
専門家

釜剛史(イノベーションコンサルタント)

株式会社あくるひ

企業研修、コーチング、技術経営コンサルティングの三つのアプローチでイノベーションを実践的に支援。富士写真フイルムやトヨタ自動車での実体験を基に、「横から目線」でクライアントの愉快創造を活性化します。

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