「本当に売れるのか?」の壁を越える 〜リーンスタートアップで進める商品開発のススメ〜

釜剛史

釜剛史

テーマ:壁を越えるイノベーション実践録

「それって、本当に売れるの?」

新商品や新事業の企画段階で、経営層や現場からよく出てくるこの疑問。

その問いにうまく答えられずに企画が立ち消えてしまった…そんな経験はないでしょうか?

実は、この“売れるかどうか”という不安こそ、イノベーションを止めてしまう最大の壁です。

ですが、裏を返せば「売れるかどうかが事前にわかれば」誰もが挑戦できるということ。

そこで今回は、「リーンスタートアップ」の商品開発アプローチについてお話しします。



「完璧な企画書」より「小さな検証」


多くの企業では、新商品を企画する際に、詳細な仕様、想定売上、開発費用などを詰め込んだ分厚い企画書が求められます。

ところが、この段階で「売れる確信」が得られていることは、まずありません。ほとんどが仮説の寄せ集めにすぎないのです。

ではどうすればよいか?

答えはシンプルです。

「小さく試す」こと。

つまり、アイデアを実際の市場や顧客にぶつけて、反応を得ながら前に進むという、リーンスタートアップのアプローチです。

リーンスタートアップの基本ステップ

1.仮説を立てる
 例:「共働き家庭は“時短家電”に高い関心があるはず」
2.検証手段を考える
 例:ペルソナを設定し、インタビューやアンケートを実施
3.実験する
 例:プロトタイプを簡易に作り、反応を見る
4.結果から学ぶ
 例:「関心はあるが、価格への懸念が大きい」という声が多い
5.仮説を修正する
 例:「関心層はいるが、“3万円以下”でないと買わない」という新たな仮説へ

このサイクルを繰り返すことで、不確実性の霧が少しずつ晴れていくのです。

ケース紹介:机上の空論から現実解へ


ある日用品メーカーで実施した企画会議。

若手社員が「夜間にトイレに行くのが億劫な高齢者向けに、光る便座カバーを開発したい」と発表しました。

会議室では一斉に「それ、売れるの?」という声。

通常ならここで企画は頓挫してしまいますが、今回は“試してみよう”と舵を切りました。

  • 社内で簡易モックを作成
  • 高齢者施設でインタビューと使用感ヒアリングを実施
  • 高齢者本人よりも「家族」の安心感が強いことが判明
  • 「転倒リスクを減らす製品」として訴求軸を変更

その結果、製品は「介護用安全サポート用品」として大手通販で取り上げられ、予想以上の売上を記録しました。

「売れるのか?」ではなく、「売れるようにするには?」という姿勢が、イノベーションを動かしたのです。

組織に必要な“実験を許す空気”


リーンスタートアップを支えるのは、小さな実験を許す空気です。

完璧な企画でなくても、まずは出してみよう。
100点を目指すのではなく、70点でも実行してみよう。

そんな文化が根づいている組織は、試行錯誤の中で必ずヒットを生み出します。

まとめ:売れるかどうかは「試して」みよう


  • 売れるかどうかを机上で考えるのではなく、実際に検証する
  • リーンスタートアップが、スピード感と確実性を両立する
  • 「やってみたらうまくいった」組織文化こそ、イノベーションの源泉




壁を越えるイノベーション実践録(30/50)

次回予告:
「アイデアを育てる“壁打ち”の技術」

〜1人で考えない商品企画の進め方〜

商品開発の壁打ち相手がほしいと感じたら、お気軽にご相談ください。
伴走型で、御社の仮説を一緒に検証してまいります。

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釜剛史
専門家

釜剛史(イノベーションコンサルタント)

株式会社あくるひ

企業研修、コーチング、技術経営コンサルティングの三つのアプローチでイノベーションを実践的に支援。富士写真フイルムやトヨタ自動車での実体験を基に、「横から目線」でクライアントの愉快創造を活性化します。

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