「ストーリーテリング」が、共感を呼び込む 〜語られた“想い”が、アイデアを動かす〜

釜剛史

釜剛史

テーマ:壁を越えるイノベーション実践録

なぜあのアイデアは、社内で受け入れられたのか?


新しい提案をしたのに、誰も耳を傾けてくれない。
良いアイデアのはずなのに、なぜか動かない。

そんな経験はありませんか?

実は、アイデアの“質”以上に大切なのが、
「どう語るか」という力です。



人は、理屈より“物語”に動かされる


イノベーションを進めるには、共感が必要です。
特に、周囲を巻き込みながら変化を起こしていく場面では、
ただ「正しい」だけでは、人は動きません。

なぜなら――
人は、理屈で納得しても、感情で動くから。

その感情を動かす鍵こそが、「ストーリーテリング」です。

「語る力」は、想いを伝える力


ストーリーテリングとは、何かを脚色して dramatize することではありません。
事実を、順序立てて、意味づけて、“誰かの物語”として伝えることです。

たとえば、以下のような語り口には、聞く人の心を動かす力があります。

  • なぜこのアイデアに取り組んだのか(原体験・課題意識)
  • どんな苦労や葛藤があったのか(過程・試行錯誤)
  • どんな未来をつくりたいのか(想い・ビジョン)


単なる「提案資料」ではなく、“あなた自身のストーリー”として語ることで、
共感が生まれ、仲間が増え、動きが加速していきます。

ケース:ある若手社員の「語り」が社内を動かした


ある中堅メーカーでのこと。
若手社員が、ある新規プロジェクトの立ち上げに苦戦していました。
企画は社内でも評価されていたものの、協力メンバーが集まらず、進展しない。

そこで彼は、役員向けの報告会で「パワポ資料ではなく、自分の声で語る」ことを決意。
語られたのは――

  • 父親の介護をきっかけに感じた社会課題
  • その課題に対して、どんなふうに会社の技術が生かせるか
  • 実現には、社内の垣根を越えた力が必要であること


言葉に詰まりながらも真剣に語る彼の姿に、
役員もベテラン社員も心を動かされ、プロジェクトは正式に始動。

今では、社内横断のチームとして複数部署と連携しながら進行中。
その原点は、「想いを語ること」でした。

「伝え方」を変えるだけで、見える景色が変わる


ストーリーテリングには、誰かを“動かす力”があります。
それはつまり、イノベーションの推進力そのもの。

大事なのは、語る内容より、語る姿勢です。

  • 自分の言葉で語れているか
  • 感情をこめて伝えているか
  • 聞く人の立場に立っているか


この3つを意識するだけで、伝わり方は大きく変わります。

まとめ:「想い」があるなら、“語ろう”


  • 人は、ストーリーに共感し、動かされる
  • ストーリーテリングは、アイデアに命を吹き込む技術
  • 「語る力」は、共創を呼び込み、イノベーションを動かす




壁を越えるイノベーション実践録(27/50)

次回予告:
ニーズは“声”からは聞こえない?

〜新商品企画の第一歩は“観察”から始まる〜

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釜剛史
専門家

釜剛史(イノベーションコンサルタント)

株式会社あくるひ

企業研修、コーチング、技術経営コンサルティングの三つのアプローチでイノベーションを実践的に支援。富士写真フイルムやトヨタ自動車での実体験を基に、「横から目線」でクライアントの愉快創造を活性化します。

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