“企画倒れ”を防ぐために必要なたった1つの視点 〜“やって終わり”にならないイノベーションの設計〜

釜剛史

釜剛史

テーマ:壁を越えるイノベーション実践録

「すばらしい企画書でしたね。でも、結局どうなったんですか?」
「キックオフまでは盛り上がったのに、その後は音沙汰なし…」

イノベーションに関する相談で、こうした“企画倒れ”の話を聞くことは少なくありません。



実は、「アイデアが悪い」「人が悪い」のではなく、“ある視点”が抜けているだけなのです。
それは、「継続性を前提とした設計思考」です。

なぜイノベーションは“やって終わり”になるのか?


多くのイノベーション施策や企画が、以下のような流れで頓挫します:

アイデアが出た! → プレゼン資料をつくる → キックオフ!
→ でも運営に無理が出る → 担当が異動する → 放置される → フェードアウト…
一見、熱意も戦略も十分に見えるこの流れ。
実は、「誰がどのように回し続けるのか」が設計されていないことが最大の弱点です。

継続性を設計するための3つの視点


1. “熱量のバトン”をつなぐ仕掛け
担当者の情熱に頼りきった企画は、異動や退職で止まります。
大切なのは、仕組みで熱量を分散・持続させること。

たとえば:

  • 推進チームを複数人で構成
  • メンターやスポンサーを巻き込む
  • 成果の可視化と共有の場を設ける


2. “定着プロセス”を事前に逆算
新しい仕組みや制度は、導入時よりも「浸透フェーズ」がカギです。
制度の説明会・フォローアップ・定着の評価など、導入後のプロセスを先に描くことが重要です。

導入=成功ではなく、「定着してからがスタート」という視点を持ちましょう。

3. “やらない理由”の先回り
イノベーションは、必ず抵抗に遭います。
「それって意味あるの?」「誰がやるの?」「時間ないよ」――

こうした反応を予測し、それに対する答えやサポート体制をあらかじめ用意しておくことで、企画倒れを防げます。

ケース紹介:「3ヶ月後の評価会」が生んだ行動の連鎖


ある企業では、新規事業の社内提案制度を始めたものの、ほとんどが初期アイデアのまま頓挫していました。

そこで導入したのが、「3ヶ月後の公開レビュー会」という仕掛け。
提案から3ヶ月後に、経営層の前で進捗と学びを発表する場を設定。

「まだ結果は出ていませんが、ここまでは試しました」
「やってみたら、この壁にぶつかりました」

そんな報告が評価され、チームのモチベーションも継続。
自然と次の行動につながっていきました。

イノベーションとは「仕掛けと仕組み」である


アイデアの鮮度や意欲は、時間とともに必ず薄れていきます。
だからこそ、継続的に動く“仕掛けと仕組み”の設計が不可欠です。

それがないと、せっかくのアイデアも“やって終わり”の運命から逃れられません。

まとめ:“火をつける”だけでなく、“火を絶やさない”視点を


  • 担当者だけに頼らない「巻き込み」と「チーム設計」
  • 浸透と定着を見越した「逆算の設計」
  • 反対や停滞を想定した「先回りの仕組み」


イノベーションの成功とは、“スタート”ではなく“持続”に宿ります。



壁を越えるイノベーション実践録(25/50)

次回予告:
「“変える”ことへの抵抗を超えるには?」 〜組織の“現状維持バイアス”を解く心理と仕組み〜

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釜剛史
専門家

釜剛史(イノベーションコンサルタント)

株式会社あくるひ

企業研修、コーチング、技術経営コンサルティングの三つのアプローチでイノベーションを実践的に支援。富士写真フイルムやトヨタ自動車での実体験を基に、「横から目線」でクライアントの愉快創造を活性化します。

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