“古参”と“若手”の断絶を越えるには? 〜世代間ギャップをイノベーションの力に変える〜

釜剛史

釜剛史

テーマ:壁を越えるイノベーション実践録

「うちの若手は指示待ちばかりで…」
「ベテランは変化を嫌って動かないんですよ」
――そんな声、聞き覚えはありませんか?

組織内で起きがちな 「世代間ギャップ」。
イノベーションの推進において、しばしば大きな壁になります。



けれども、それは決して「相容れない違い」ではありません。
“断絶”を“対話”に変えるだけで、両者の力が共鳴し合う組織に変わるのです。

なぜ世代間で分断が起きるのか?


1. 見てきた景色が違う
ベテランは「失敗を避け、リスクを最小に」という時代にキャリアを築いてきた一方、
若手は「挑戦してナンボ」「変化が当たり前」という空気で育ってきました。

価値観・判断基準が根本から異なるため、同じ出来事を見ても、捉え方がズレるのです。

2. お互いが「わかってくれない」と思っている
古参:「若手は何を考えているのかわからない」
若手:「上司は話を聞いてくれないし、頭ごなし」

どちらも“わかってほしい”気持ちの裏返し。
でも、それが対話の不在と対立感情につながってしまうのです。

対立を越えて“共創”へ導く3つの工夫


1. 「経験」と「視点」の交換ワークをする
たとえば、問題解決ワークショップの冒頭に、
ベテランが失敗談や成功の背景を語り、若手がそこに質問を投げかける時間を設けます。

これだけで「なるほど、そういう背景があったのか」と相互理解が一気に深まります。

2. 世代を越えて「ペア」を組ませる
同世代でのペアワークではなく、あえて古参と若手でペアにする設計にすると、
固定観念が壊れ、相互依存が生まれます。

「自分が相手を変える」のではなく、「お互いの知恵を借りる」という前提が育まれます。

3. “お互い様”の視点を育てる問いかけ
「自分たちが若手の頃、上司からどう見られていましたか?」
「今の若手がベテランになった時、どんな悩みを持ちそうですか?」

こうした問いは、立場を越えた想像力を生み、共感を誘います。

ケース紹介:「世代融合」が起こしたアイデア転換


ある製造業での新商品開発ワークショップ。
初めは若手が遠慮がちに発言し、ベテランが「そんなの現実的じゃない」と遮る雰囲気でした。

そこで途中から、“世代を逆転”したロールプレイを実施。
ベテランが若手役、若手が上司役を演じたことで、場が一変。

「昔の自分も、同じように上から否定されていた気がする」とベテランが語り、
若手も「現場の制約をもっと聞いておけばよかった」と反省。

結果として、両者が知恵を出し合い、実現性と革新性を両立したアイデアが採択されました。

まとめ:世代間ギャップは、伸びしろの宝庫


  • 分断は、理解不足ではなく、対話不足から生まれる
  • 違いを埋めるのではなく、活かし合う視点が重要
  • 越境型ワークや対話設計が、共創のスイッチになる




壁を越えるイノベーション実践録(23/50)

次回予告:
なぜあの人の提案は通るのか? 〜イノベーションを動かす“巻き込み力”の正体〜

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釜剛史
専門家

釜剛史(イノベーションコンサルタント)

株式会社あくるひ

企業研修、コーチング、技術経営コンサルティングの三つのアプローチでイノベーションを実践的に支援。富士写真フイルムやトヨタ自動車での実体験を基に、「横から目線」でクライアントの愉快創造を活性化します。

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