“外圧”がもたらす組織変革のチャンスとは? 〜危機感の共有が、現場の自走を引き出す〜

釜剛史

釜剛史

テーマ:壁を越えるイノベーション実践録

「変わらなきゃいけないのはわかってる。でも今は無理なんです」

これは、私が企業の現場で最もよく聞く言葉の一つです。

変革の必要性は頭では理解していても、
現場の優先順位に組み込まれず、いつしか先送りされてしまう。

そんなとき、起爆剤になるのが――“外圧”です。



外圧とは何か?


ここで言う「外圧」とは、以下のような外からの強い変化やプレッシャーを指します。

  • 顧客からの厳しい要望・クレーム
  • 競合他社による価格破壊や新技術投入
  • 法制度や社会的ニーズの変化


社内でも「他部署の変化」や「新任上司の着任」など
自分たちの意志ではなく、外部からの力により変化を求められる状態。
これが、組織にとっては“ピンチ”でありながら、変革のチャンスにもなります。

「自走」は危機感から生まれる


人も組織も、基本的には現状を維持したがるもの。
そこに外圧がかかることで、はじめて「なんとかしなければ」という心理が生まれます。

つまり、「危機感の共有」=「組織の起動スイッチ」。

現場が“指示待ち”から“自走型”へ変わるきっかけは、
多くの場合、外圧を共有した瞬間にあります。

外圧を「組織の燃料」に変える3つのポイント


1. 「逃げずに直視する」空気をつくる
不都合な事実や批判の声にフタをするのではなく、
まずは正面から受け止め、全員で共有することが第一歩です。

ある企業では、顧客アンケートで寄せられた厳しい意見を
あえて「全社で読む会」を開催し、そこから現場改善のプロジェクトが動き出しました。

2. 「自分ごと化」する問いを投げかける
外圧を単なる指示で終わらせず、
「私たちはどうする?」と問いかけることが、変革を自分ごとにするカギです。

「このままでは○○になる。では、私たちは何を変えたいか?」
というフレームで、対話をスタートさせましょう。

3. 外圧を“希望”に変えるストーリーを語る
危機感だけでは、人は動きません。
必要なのは、変わった先にある未来像。

ある製造業では、業界再編による事業縮小の危機を受けて、
「逆にこのタイミングで技術を磨き、新規事業に挑戦しよう」というストーリーが描かれました。
そこに若手が集まり、プロジェクトが立ち上がりました。

ケース紹介:「クレームがきっかけで組織が変わった」


あるサービス業のクライアントでは、
SNSで拡散された顧客の不満がきっかけで、会社全体がざわつきました。

当初は責任の押し付け合いがありましたが、
「今後、同じことを二度と起こさないために何ができるか」を軸に全社会議を実施。

結果、部門を越えた情報共有システムが立ち上がり、
対応スピードと顧客満足度が劇的に改善しました。

“外圧”は、痛みとともに進化のスイッチを押してくれたのです。

まとめ:外圧は、変革の風向きを変えるチャンス


  • 外圧を直視し、対話の場を設けることで「自分ごと化」できる
  • 危機感の共有は、現場の自走スイッチを押す
  • ストーリーによって、外圧は“恐怖”から“希望”へと変えられる




壁を越えるイノベーション実践録(21/50)

次回予告:
「“出すぎた杭”を育てる組織へ」 〜個性や異端を押さえ込まず、力に変えるマネジメント〜

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釜剛史
専門家

釜剛史(イノベーションコンサルタント)

株式会社あくるひ

企業研修、コーチング、技術経営コンサルティングの三つのアプローチでイノベーションを実践的に支援。富士写真フイルムやトヨタ自動車での実体験を基に、「横から目線」でクライアントの愉快創造を活性化します。

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