「ストーリーテリング」が、共感を呼び込む 〜語られた“想い”が、アイデアを動かす〜
「チャレンジしていいよ」
「失敗しても責めないから」
そう声をかけたのに、現場がまったく動かない――。
そんな経験、ありませんか?
実は、「失敗してもいい」というメッセージほど、
本気度が試されるものはありません。
表面的な言葉だけでは、誰も本気では挑戦しません。
なぜなら、多くの職場にはこんな“経験則”が根づいているからです。
- 失敗したら、結局評価が下がる
- 挑戦より、ミスしないことが重視される
- 失敗に優しいのは言葉だけで、空気は冷たい
イノベーションは挑戦から生まれます。
しかしそのためには、「本当に失敗してもいい」と信じられる土壌が必要なのです。
「失敗してもいい」は、どこまで許されているか?
多くの組織で、「心理的安全性」や「挑戦歓迎」の言葉が掲げられています。
ですが、そこに明確な“失敗の許容範囲”がないと、現場は動けません。
例えば──
どこまでの損失なら許容される?
どんなリスクなら背負っていい?
どの段階で相談すべき?
これらが不明瞭なままだと、現場は「とりあえずやらない」選択を取るのです。
挑戦文化をつくる3つのポイント
1. 「許される失敗」と「許されない失敗」を明確にする
全ての失敗を許すわけではない。
準備不足や確認漏れによる失敗は責任が問われます。
一方で、計画的に挑んだ結果としての失敗は称賛すべきです。
明確な「挑戦ガイドライン」が、行動の安心感を生みます。
2. 「失敗を語る場」を意図的につくる
上司やリーダーが、自らの過去の失敗談を語るだけで、
場の空気は一気に柔らかくなります。
私が登壇する企業研修でも、「講師の失敗談」への関心はとても高く、
参加者は一様に「自分も話していいんだ」と安心します。
“失敗を話せる風土”が、挑戦を促します。
3. 失敗の“学び”を公式化する
失敗は、学びに変えて初めて組織の資産になります。
- どこに落とし穴があったのか
- どうしたら防げたのか
- 次にどう活かすのか
振り返りの仕組み(After Action Review)をルール化することで、
失敗が“未来の成功”の種になります。
ケース紹介:ある大手企業の「称賛文化」
ある大手メーカーでは、失敗しても学びが大きかったプロジェクトを
「チャレンジ賞」として表彰しています。
- 最終的に売上に結びつかなかった製品開発も、
- 市場ニーズの読み違えをどうリカバリーしたか
- 他部門との連携をどう築いたか
など、学びの共有が次のプロジェクトの成功につながっているのです。
結果として、若手や中堅層の挑戦回数が格段に増え、
「やってみる文化」が育ってきています。
まとめ:「失敗してもいい」は、行動と仕組みで示す
- 単なるスローガンでは、現場は動かない
- 明確なルールと称賛文化が、挑戦の心理的安全性を生む
- 組織にとっての“挑戦資本”は、失敗の経験にこそ宿る

壁を越えるイノベーション実践録(20/50)
次回予告:
「“忙しい”が口ぐせの職場にイノベーションを根づかせるには?」 〜時間がない中で新しいことに取り組む“余白”のつくり方〜



