プロトタイプが動かすチーム 〜形にしてみて初めて見える“本当の課題”〜
「何度も言っているのに、現場が動かない」
「結局、上の人は分かっていない」
現場とリーダー、双方の立場で、よく聞かれる声です。
本気で変えようとしているのに動かない、もどかしい。
でもその原因は、“やる気”の有無ではなく、
「見ているものの違い」=認識ギャップにあるのかもしれません。
イノベーションは「ギャップ」から始まる
イノベーションは、「現状」と「あるべき姿」のギャップを埋めようとする試みです。
しかし、その前提となる“現状の認識”や“あるべき姿”のイメージがズレていると、
行動は食い違い、結果として「動かない」ように見えるのです。
たとえば──
リーダー:問題を解決してほしい
メンバー:まずは上司が話を聞いてくれないと動けない
リーダー:全体最適の視点で考えている
メンバー:自部門の指示と整合していないから混乱している
こうしたギャップに気づかないまま、コミュニケーションを重ねても、
“空回り”が続くだけです。
よくある3つの「認識ギャップ」
1. 課題の定義が違う
リーダーと現場で、何が問題かの認識がズレていることが多々あります。
現場は「作業量の多さ」を問題視し、
リーダーは「顧客満足の低さ」に注目している──このようなズレはよくあります。
まずは「何に困っているのか」を双方向で言語化することから始めましょう。
2. 成果の評価軸が違う
リーダーは「新しいことに挑戦してくれた」と前向きに捉えても、
現場では「時間をかけた割に評価されなかった」と感じることも。
評価基準や期待値の共有は、ギャップを埋める鍵です。
3. 言葉の解釈が違う
「主体的に動いてほしい」といった言葉も、
リーダーは「提案してほしい」、
現場は「一人で判断して動けという意味?」と受け止めていることがあります。
曖昧な言葉ほど、具体例を伴って説明することが大切です。
ギャップを埋める3つの対話ステップ
ステップ1:相手の世界に一度入り込む
「なぜそう感じているのか?」
「どんな前提があるのか?」
まずは理解モードで聞く姿勢が、信頼の土台になります。
ステップ2:自分の見えている世界を開示する
次に、「自分はこう見えている」と主観的事実を共有します。
正論ではなく、立場としての視点を語ることで、相互理解が進みます。
ステップ3:共通の“問い”を持つ
「では、どうしたらうまくいくのか?」
両者が同じ問いを持つことが、行動の接点になります。
ケース紹介:変化が始まった1on1
ある製造業の中間管理職が取り組んだのは、
「まずは部下の話を10分、否定せずに聞く」こと。
最初は戸惑いもあったものの、回を重ねるうちに
「部下の本音が少しずつ出てきた」
「自分がいかに“分かったつもり”でいたかに気づいた」といった変化が起こり、
半年後には、チームで自主的な改善提案が飛び交うようになったのです。
まとめ:ギャップに気づくことが、変化の第一歩
- 「動かない」背景には、認識のズレがある
- 認識ギャップを埋めるには、対話と共通言語が欠かせない
- 上司・部下・部署間…すべての越境は、まず“聴く”ことから始まる

壁を越えるイノベーション実践録(19/50)
次回予告:
「“失敗してもいい”はどこまで本気か?」 〜“挑戦できる組織文化”の本当のつくり方〜



