“やらされ感”を“やってみたい”に変えるには? 〜モチベーションを科学するアプローチ〜

釜剛史

釜剛史

テーマ:壁を越えるイノベーション実践録

「上司に言われたから仕方なくやっています」
「どうせ形だけの取り組みでしょ」

イノベーションに取り組もうとする現場から、こうした“やらされ感”が漂ってくることは珍しくありません。



せっかく良い企画を準備しても、参加者が受け身では効果は半減。
逆に、“やってみたい”という内発的なモチベーションが芽生えれば、組織は一気に動き始めます。

本稿では、やらされ感を乗り越えて「やってみたい!」を引き出すにはどうすればよいのか?について、理論と実践の両面から考えていきます。

モチベーションの「2つの源泉」


動機づけには大きく分けて、以下の2種類があります。

  • 外発的動機づけ:報酬や評価、命令など、外から与えられる動機
  • 内発的動機づけ:好奇心や達成感、自分の成長など、内から湧き上がる動機


イノベーションのような「答えがない取り組み」においては、内発的動機づけが極めて重要です。

なぜ“やらされ感”が生まれるのか?


多くの現場では、以下のような構造が“やらされ感”を生んでいます。

  • 「方針」だけが上から降りてくる
  • 「自由にやっていい」と言いつつ、結果は求められる
  • 「期待されている」のではなく、「監視されている」と感じる


このような状況では、たとえ建前では“やりがい”を掲げていても、心は動きません。

モチベーションを科学する3つの鍵


内発的動機づけを高めるには、心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した「自己決定理論(Self-Determination Theory)」が有効です。

この理論によれば、人のやる気は以下の3要素に左右されます。

1. 自律性(Autonomy)
「自分で選べている」と感じること。
与えられた仕事でも、やり方や進め方を任せられるだけで、自律性は高まります。

2. 有能感(Competence)
「できるようになっている」と感じられること。
小さな成功体験や、適切なフィードバックがモチベーションにつながります。

3. 関係性(Relatedness)
「仲間とつながっている」「役に立っている」と実感できること。
孤独なチャレンジは長続きしません。

実践例:モチベーションが変わった瞬間


ある自治体で実施した「若手職員による新規提案プロジェクト」では、当初「どうせ形だけ」と冷めた雰囲気がありました。

しかし、以下の工夫によって徐々に空気が変わっていきました。

  • テーマを自ら選ばせ、自律性を高めた
  • 進捗に応じてこまめにフィードバックし、有能感を育んだ
  • チーム制を導入し、互いに応援し合う関係性をつくった


結果、最終回のプレゼンでは「もう一度やってみたい」「来年度も関わりたい」という声が続出。
“やらされ感”が“やってみたい!”に変わった瞬間でした。

「やる気が出ない部下」に悩んだら?


上司が「やる気を出せ」と言っても、本人の内側が変わらなければ意味がありません。

そんなときは、上司が“選択肢”を渡すことが効果的です。

たとえば、「次のテーマ、AとBどちらが気になる?」といった問いかけ。
小さな選択の積み重ねが、自律性と主体性を育てていきます。

まとめ:「やってみたい」は設計できる


  • モチベーションは感情論ではなく「構造」で生み出せる
  • 自律性・有能感・関係性の3要素を意識することがカギ
  • やる気は「出させる」ものではなく、「引き出す」もの




壁を越えるイノベーション実践録(16/50)

次回予告:
「正論が通じない現場をどう動かすか?」 〜“正しさ”より“納得感”を大切にする伝え方〜

\プロのサービスをここから予約・申込みできます/

釜剛史プロのサービスメニューを見る

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

釜剛史
専門家

釜剛史(イノベーションコンサルタント)

株式会社あくるひ

企業研修、コーチング、技術経営コンサルティングの三つのアプローチでイノベーションを実践的に支援。富士写真フイルムやトヨタ自動車での実体験を基に、「横から目線」でクライアントの愉快創造を活性化します。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

教育研修を通じて世界に愉快を創造する専門家

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ愛知
  3. 愛知のビジネス
  4. 愛知の人材育成・社員研修
  5. 釜剛史
  6. コラム一覧
  7. “やらされ感”を“やってみたい”に変えるには? 〜モチベーションを科学するアプローチ〜

釜剛史プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼