「言語化」がすべての出発点 〜アイデアも、課題も、まずは言葉にしよう〜

釜剛史

釜剛史

テーマ:壁を越えるイノベーション実践録

「なんとなくモヤモヤしているけど、うまく言えない…」

イノベーションの現場で、よく見られる光景です。
そして多くの現場が、その“モヤモヤ”のまま動き出してしまい、途中で行き詰まる。

実は、イノベーションの成否を分ける大きなポイントが“言語化”にあります。



言語化できない課題は、解決できない


課題が漠然としていると、周囲との認識にズレが生じ、手戻りや衝突が起こりやすくなります。
「課題は○○です」とはっきり言える状態になって初めて、チームで取り組む準備が整うのです。

たとえば、
「業務が大変だから効率化したい」ではなく、
「毎日2時間を費やしている手作業を削減したい」

このように言語化することで、問題の輪郭が明確になります。

言語化は「翻訳」と「編集」


言語化には、2つの力が求められます。

1. 翻訳する力

現場の“感覚的な違和感”を、ロジカルな言葉に変換すること。
これは、経営と現場、理系と文系などの間をつなぐ“越境力”とも言えます。

2. 編集する力

課題を整理し、順序や構造を明確にすること。
散らかった情報を、「なぜそれが重要なのか」の視点でまとめ直すスキルです。

言葉にすることで、人が動く


ある製造業の新商品開発でのこと。
開発メンバーは「ユーザーの声に応えたい」とは言うものの、どんなニーズがあるのかをうまく言葉にできていませんでした。

そこで、ユーザー観察やヒアリングを通じて「本当に困っていること」を丁寧に言葉にしてみると、
「あの作業、毎回手が痛くなるんだよね」
という一言から「負担の少ない操作性」が明確な開発方針となり、プロジェクトが一気に加速しました。

モヤモヤを、チームで共有できる“言葉”にすることで、行動につながるのです。

言語化を助ける3つのヒント


1. 5W1Hで聞いてみる

「誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どうやって?」
この基本を丁寧に確認すると、曖昧な部分が浮かび上がります。

2. たとえ話で置き換える
「○○みたいな感じ」という喩えは、抽象的な話を一気に共有しやすくします。

3. 書いてみる
ホワイトボードやメモ帳で、まずは“見える化”。
書いているうちに、頭の中が整理されます。

言葉が未来をつくる


言語化は、単なる説明のためではありません。
それは、思考の整理であり、チームの合意形成であり、未来への第一歩です。

言葉にしようとする姿勢が、相手との信頼を生みますし、
言葉にすることで、視点が増え、可能性が広がります。

まとめ:すべては、言葉から始まる


  • 言語化できない課題は、解決できない
  • 翻訳と編集のスキルが、言葉を磨く
  • 言葉にすることで、人が動き、未来が変わる




壁を越えるイノベーション実践録(8/50)

次回予告:
イノベーションは“現場”から起こる 〜ボトムアップで組織を変える仕掛け〜

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釜剛史
専門家

釜剛史(イノベーションコンサルタント)

株式会社あくるひ

企業研修、コーチング、技術経営コンサルティングの三つのアプローチでイノベーションを実践的に支援。富士写真フイルムやトヨタ自動車での実体験を基に、「横から目線」でクライアントの愉快創造を活性化します。

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