技術と経営の“死の谷”を越えるには? 〜ベネフィットとリスクをつなぐ視点〜
「もっと周りを巻き込んでくれたら、うまくいったのに」
イノベーション支援をしていると、そんな声をよく耳にします。どんなに素晴らしいアイデアも、一人の力では現実にはなりません。むしろ、アイデアを共有し、周囲を巻き込んでいく力こそが、イノベーションの出発点なのです。
なぜ「巻き込む力」が必要なのか?
イノベーションとは、これまでになかった価値を生み出す行為です。
しかし新しいことには、常に「不安」や「抵抗」がつきもの。
- 他部門からの「それって本当に必要?」という冷ややかな目
- 上司の「うちの方針とは違うよ」という一言
- チーム内の温度差
これらを乗り越えていくには、共感と信頼をベースにした「巻き込む力」が必要不可欠です。
巻き込みは“説得”ではなく“共創”
巻き込み力というと、「説得する技術」と捉える方がいますが、私は“共創のプロセス”をデザインする力だと考えています。
以下は、ある製造業の新商品開発の現場での話です。
開発リーダーがアイデアを持っていたものの、社内の理解は得られず、頓挫しかけていました。
しかし、部門横断のワークショップを設け、「そもそも私たちは何を解決したいのか?」という対話を行ったことで、視点が変化。
結果、開発、営業、品質保証などの垣根を越えた共創チームが立ち上がり、プロトタイプから顧客提案までを一気に進めることができました。
アイデアの正しさを証明するよりも、「一緒に創る」場をつくることが重要なのです。
巻き込むための「3つのステップ」
1. 小さな共感から始める
「こんな課題を感じていませんか?」
相手の“違和感”に共鳴することが、最初の一歩です。
2. 可視化する
図やスケッチ、短いプレゼンなど、イメージを共有できる形で示すと、話が進みやすくなります。
3. 余白を残す
「完成品」ではなく「途中のアイデア」を共有することで、相手も自分ごととして関われます。
共創型イノベーションに求められるマインドセット
共創は時間も手間もかかります。
しかし、巻き込んだメンバーが自発的に動くようになると、アイデアは“私のアイデア”から“私たちの挑戦”へと変わっていきます。
そのためには、以下のマインドが大切です。
- 「アイデアは途中でいい」
- 「100点ではなく、対話を始める50点を出す」
- 「異なる意見は宝物」
まとめ:イノベーションは一人では起こせない
- 「巻き込み」は説得ではなく共創のプロセス
- 共感 → 可視化 → 余白の共有が鍵
- 対話の場づくりこそ、リーダーの重要な仕事

壁を越えるイノベーション実践録(7/50)
次回予告:
「言語化」がすべての出発点 〜アイデアも、課題も、まずは言葉にしよう〜



