“外圧”がもたらす組織変革のチャンスとは? 〜危機感の共有が、現場の自走を引き出す〜
「とりあえずDXをやらなきゃ」
「とにかく新規事業を出せって言われていて…」
「研修は毎年のルーティンだから今年もやります」
そんな言葉を現場で耳にするたびに、私は少しだけ胸が痛くなります。
なぜなら、それが「目的なき手段」のはじまりだからです。
手段が目的化した瞬間、意味が見えなくなる
たとえば「DXを推進すること」が目的になってしまうとどうなるか。
- 現場の課題と関係ないツールが導入される
- 誰のためのデジタル化かわからないまま形だけが整う
- 「なぜやるのか」が見えないため、現場の協力が得られない
本来、「目的」は“何を実現したいか”であり、
「手段」は“そのための方法”であるはずです。
しかし目的が曖昧なまま動き始めると、
手段だけが独り歩きし、組織がブレていくのです。
手段の暴走は、組織の“疲弊”を生む
目的が見えないままの施策は、しばしば現場に「作業」を強います。
- 「なぜこの調査を繰り返すのか、説明がない」
- 「またこの研修?前回と同じで効果あったのかな」
- 「とりあえずイベントをやることが仕事になっている」
この状態が続くと、現場のエネルギーは消耗し、創造性は失われていきます。
「目的は何か?」を問い直す技術
ではどうすれば、“目的なき手段”に陥らずに済むのでしょうか。
私が企業支援の現場でよく用いるのが、次のようなフレームです。
1. 「なぜそれをやるのか?」を3回問う
たとえば、「新規事業を立ち上げる」と聞いたら…
Q1:なぜ新規事業なのか?
→ 既存事業が頭打ちになっているから
Q2:なぜ頭打ちなのか?
→ 顧客ニーズの変化に対応できていないから
Q3:なぜ対応できなかったのか?
→ 現場に顧客の声が届いていないから
ここまでくると、本当にやるべきことが見えてくることがあります。
(例:情報共有の仕組みの見直しや、現場への裁量移譲)
2. 「誰の、何のために?」を常にセットで考える
どんな活動にも、「誰のためか」「何のためか」の問いを忘れない。
この問いが、“意味”を取り戻す最初の一歩になります。
目的から始める組織は、軸がブレない
目的が明確な組織では、手段に柔軟性があります。
「何のために?」が全員に共有されているから、手段が変わっても迷わない。
- 顧客価値を届けるために、商品設計を変える
- 社員の主体性を育てるために、研修内容を刷新する
- 社会課題を解決するために、ビジネスモデルを進化させる
目的があれば、変化を恐れず、本質的な判断ができるようになります。
まとめ:「目的」を取り戻すことから、始めよう
- 手段はあくまで「目的を実現するための道具」
- 目的が曖昧なまま進むと、現場が疲弊する
- 「なぜ?」「誰のため?」の問いを手放さないこと
もし、いまやっている業務にモヤモヤを感じているなら、
その原因は「目的の見失い」にあるかもしれません。
壁を越えるイノベーション実践録(13/50)
次回予告:
「決められない病」の処方箋 〜イノベーションを止める“決断疲れ”からの脱出法〜



