“出すぎた杭”を育てる組織へ 〜個性や異端を押さえ込まず、力に変えるマネジメント〜
「人は理屈で動くのではなく、気分で動く」
これは私が企業研修の現場やコンサルティングで何度も見てきた真実です。
どれだけ立派な資料や論理的な説明を準備しても、組織の空気が重く、受け手の気分が乗っていなければ、何も始まりません。逆に、少し場の空気が緩んだだけで、表情が和らぎ、発言が生まれ、動き出す――そんな瞬間を私は何度も目撃してきました。
変化を起こすには、「空気」と「感情」を扱う
イノベーションというと、戦略や技術、ビジネスモデルといった“ハード”な要素に注目が集まりがちです。しかし、実際の現場で変化を起こすためには、もっと“ソフト”なもの――空気や感情――をマネジメントする力が欠かせません。
「うちの職場では無理だよね」
「どうせ意見を言っても変わらない」
そんな無意識の“あきらめ”が蔓延している職場では、変化の芽が出る余地はありません。けれど、その空気を変えることは可能です。たった一人の前向きな言葉や、ひとつの笑いが、職場全体にじわじわと影響を及ぼすのです。
愉快な空気をつくる3つの工夫
私が研修やコンサルティングで意識している“場づくり”のポイントを紹介します。
1. 緊張を解く自己開示
冒頭で、私自身の失敗談や意外なエピソードを語ります。「この人も完璧じゃないんだ」と思ってもらうことで、参加者の心が開きやすくなります。
2. 笑いのあるファシリテーション
ユーモアは、場の潤滑油。固くなりがちな会議や研修にも、ちょっとした笑いを交えることで、空気が一気に軽くなります。
3. 「できた」を実感させる仕掛け
小さな成功体験を積み上げることで、参加者の「できるかも」という感情を引き出します。これは後の行動変容にもつながります。
眉間のしわでは、変化は起きない
かつて私が担当したある技術系の研修では、最初、全員が無言で表情も硬く、「この空気、どうしたものか」と感じたことがありました。
しかし、あえて自己開示から入り、参加者一人ひとりの関心に触れる対話を重ねたことで、少しずつ笑顔が生まれ、最終回では「先生、また来てくれるんですか?」とサインを求められるまでになったのです。
感情を扱うことは、“非論理的”なようでいて、実は最も論理的な変化の第一歩です。
まとめ:変化は、笑顔から始まる
「世界を変えるのは眉間のしわじゃない」
これは私が現場で得た、最もシンプルで、最も本質的な教訓です。
どんな改革も、どんな挑戦も、まずは“愉快な空気”をつくることから。
次回は、「その場の空気」を超えて、イノベーションの実行を支える“思考の壁”をどう越えるか、というテーマでお届けします。
壁を越えるイノベーション実践録(2/50)
次回予告:
「壁は、思考の中にある」 〜創造性を阻む“思い込み”を超える方法〜



