「介護うつ」にならないために
突然、母が倒れた、何をすれば(その2) ・・・ 準備していて良かったこと(私の体験談)
携帯電話の効用について
卒業・入学・就職シーズンも終わり、携帯電話の宣伝ではと誤解される時期も過ぎたようなので、この話題に触れてみる。
私の母の命が助かったのは、ふだんは彼女があまり使うことのない「携帯電話」を持たせていたからである。その携帯は、俗にいうガラケー。電話番号も、私と妹とごく親しい知人数名しか登録されていないものである。
ここからは、前回のコラムにも書いたが、暑かった2015年7月13日、午前中に電話で「ちゃんと水分補給しなよ」なんて私に言われながら元気そうに会話をしていた母が、夕方になって私の携帯に電話をかけてきた。「おまえ今どこにいるの?」 「うん事務所。」「体動かなくなった、起きられなくなった。」 「えーっ、すぐ行くから。」 駆け付けて、容態を観察して救急車の手配。突然始まった介護の始まり。このとき母が私に電話してきたのが、ガラケー携帯電話。
自宅に固定電話もあったが、母はなぜ携帯で連絡してきたか。それは、固定電話が設置されている場所の高さです。後の診断で脳梗塞とわかりましたが、突然倒れ・半身がマヒしていると、高さ65センチ程度の電話台に置いた固定電話機で会話するのは難しいようです。非常事態の時、茶の間で母は半分動く体をぐるぐる回転させながら、ポットのそばに置いてあった携帯にたどり着き、私に連絡をよこしたのです。常日頃から、二階に行くときもポケットに入れて持って行けと言っていたのですが、携帯を近くに置いておくことが功を奏したのです。だから携帯電話なんですが。
高齢者向けの非常時の連絡体制は、各自治体が「緊急通報システム」などの構築に伴って各家庭に設置作業を進めていますが、なかなか協力員といった(人的な)部分の整備が遅れていて、うまく機能していない現状にあるようです。また、独居の方のみに貸与するといった決まり事がある。
普段家族と同居していても、日中家族はみんな仕事や学校などに出かけるため、高齢者のみが自宅に留守番しているような家庭が数多くあります。これらの家庭は、高齢者の突然の病気発症・転倒・火災など、非常事態が起きても、勤務先や学校にいる家族は家庭内の高齢者の状況が分かりません。
こういった家庭も、日中は一種の独居状態と言えますが、厳密には独居ではないので緊急通報システムは設置できません。
こんなときに、携帯電話は大いに活躍できます。是非とも高齢者に1台持ってもらうのがいいと思うのです。
ただし、携帯各社は2017年以降ガラケーの生産を終了すると発表しました(2015年4月22日)この方針は間違っていると私は感じます。なぜ日本が独自に進化させた多機能携帯を途絶えさせてしまうんでしょうか。
高齢者にスマホ(携帯型のPC)は要りません、ガラケーでいいんです。緊急時に連絡出来たり、会話したりだけでいいんです。PC機能なんていらないから、待受画面に家族、孫、ペットなど気に入った写真が表示できていればそれでいいんです。そして緊急に家族に電話できるよう、大きな押したことが確実にわかるボタン、大事な連絡先3か所ぐらいに発信できるボタンが別にあればいいんです。
どうしてもスマホを持たせたいのか各社は「ガラホ」とか言って、ガラケーとスマホを合体したものも生産販売していますが、私からすれば、お年寄りを良くわかっていない発明なんです。スマホとしての利益優先ですかね。お年寄りは、みんな画面にタッチして操作することが苦手なんです。ボタンを確実に押してつながることが視力が弱まっている方への安心感を与えているんですけどね。
なぜ、携帯電話というのか、本末転倒とならないような高齢者向けの機能を持たせた通話手段を安価に提供してほしいとつくづく思う。