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目利き歴40年「審美眼」で古陶磁との出合いをお手伝い

古美術(中国・朝鮮・日本古陶磁)のプロ

東森資明

東森資明 とうもりよしあき
東森資明 とうもりよしあき

#chapter1

「傷がない」「上がりがよい」「形がよい」がポリシー

 物によっては100年、1000年の時を超えて愛される古陶磁。見て楽しみ、所有する満足感が魅力の一つです。24歳で古美術の道に入った東森資明さんは40年以上、中国、朝鮮半島、日本の古陶磁を中心に扱ってきました。「古陶磁には、良い物も悪い物も見極める『審美眼』が必要。誰が見てもいい、見やすい物は買って間違いない」と自信を持って語ります。

 古陶磁は何年かのスパンでブームが訪れ、テレビ番組でも時々「お宝」が発見されます。いま人気なのが、中国の宋時代の陶磁器や康煕(こうき)、雍正(ようせい)、乾隆帝(けんりゅうてい)に代表される清朝時代に皇帝が使っていた官窯(かんよう)などです。「爆買い」で知られる裕福な中国人が買い求め、価格はこの10年で10倍以上に値上がりしている物もあります。富裕層の間では、中国から日本に流れた古陶磁を中国へ買い戻す動きも広がっているそうです。

 長年、本物を見てきた東森さんが大事にしているのは、「傷がない」「上がりがよい」「スタイル(形)がよい」の3要素です。見る人の目や感性は千差万別。それでも、見る人によって「真贋に見解の相違」のある古陶磁は基本的に扱わないことがポリシーです。「良い物を見ていると、悪い物が分かる。良い物は人によって評価が分かれるケースは少ない。つまり、良い物は誰が見ても良い物なのです」と持論を語ります。

 古陶磁の魅力を「置いて眺め、素晴らしいと感じ、見れば見るほど愛着がわいてくること」と言います。飾るだけでなく、杯や徳利といった酒器は毎日使う楽しみがあり、日々の生活を心豊かにしてくれます。やりがいは「お客さんから、買って良かったと言われること。これに尽きます」。一度しまった古陶磁を5年後に再び出してきても「やっぱり良い物だ」と思わせるのが、理想的な古陶磁との出合いです。

#chapter2

「本物だけを見よ」師匠のシンプルな教え

 東森さんは祖父の代から続く古美術商の家に生まれました。地元の富山商業高校を卒業後、大阪の大手古美術商に修業に行きました。いわゆる「丁稚奉公」です。父は「偽物は売らない」という人で、「値段が2割以上高くても間違いない物を売る」という商売で信用を得ていきました。東森さんにすぐに跡を継がせず、大阪に修業に行かせたのも、レベルの高い品が集まる広い世界で「審美眼」を鍛えてほしいとの思いからでした。

 大阪での修業時代、師匠に連れられ、市場や交換会に毎日のように足を運んだ東森さん。陶磁器だけでなく、書などもたくさん見て勉強しました。師匠の教えはシンプルで「いい物だけを見なさい。本物を見なさい」だけ。住み込みの世界は厳しく、目利きについて手取り足取り教えてくれる世界ではありませんでした。東森さんは「物を見る目は自分で養うしかない」と思い立ち、本物に触れ、書物を読み、先輩に教わるなどして、文字通り、自分で自分の目を磨きました。

 修業時代にはある「特技」を身に付けました。師匠が買い付けたものは当時、風呂敷で包んで持ち帰りました。数点の品物をそのまま包んでも、動いて崩れてしまう可能性があったので、風呂敷の上からしっかりと紐を掛けました。今でも風呂敷包みで品物を運べる技術はその時に学んだものです。「今の若い人にはできないでしょうね」と東森さんは笑います。同じ住み込みの仲間や市場で顔見知りになった人とは今でも仕事をする機会があります。情報収集やネットワーク構築などに若かったころの人脈が生きることも少なくありません。

東森資明 とうもりよしあき

#chapter3

古美術ファン拡大へオークション開催も

 東森さんは古美術を多くの人に知ってもらう取り組みも進めています。その一つが2000年に、他の古美術商と立ち上げた「日本海アートオークション」です。プロ・アマ問わず、美術品愛好家が一堂に集まり、本物の美術品をオープンかつ適正な価格で、しかも目の前で取引ができる安全・安心な場を提供しています。このような地道な取り組みで古美術ファンのすそ野を広げています。

 業界の発展にも尽力しています。東森さんは1993年に富山美術商協同組合の理事となり、2001年に専務理事、2015年から理事長を務めました。2019年に退任しましたが、「古美術の魅力を多くの人に伝えたい」という情熱は変わりません。2009年から2015年まで、オークションの会場となった富山美術倶楽部の取締役も務めました。

 少子高齢化が進む中、古美術ファンの拡大が課題です。比較的高齢な常連客が多い中、若い人や古美術を始めたいという初心者にどのように魅力を伝えていくか。古美術には「高い」「難しい」というイメージがありますが、東森さんは「数千円程度」から手に入る面白い物もある。実は手軽に始められることを知ってもらい、初心者にも丁寧に教えたい」と話します。

 江戸期の古伊万里や古九谷などがある暮らしは、日常の生活に潤いを与えてくれます。古美術ファンは自身の好みやこだわりが明確な人が多いそうですが、東森さんによると「古美術について全く分からないという人の方がすっと入り、はまる人が多い」とのこと。初心者はもちろん大歓迎で「本筋というか、筋のいい物を買ってほしい。一生付き合える古美術との出合いのお手伝いができれば」と語ります。

(取材年月:2020年10月)

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東森資明

古美術(中国・朝鮮・日本古陶磁)のプロ

東森資明プロ

古物商

古美術 東森商店

厳しい修業時代を経て、40年以上培ってきた目で、一生付き合える古陶磁との出合いをお手伝い。「高い」「難しい」というイメージを払拭して、初心者でも筋のいい物から手軽に始められる古美術の魅力を伝えます。

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