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医師の生徒さんたち

上野伸彦

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当館には小学生から60代後半まで幅広い生徒さんが在籍なさっておられます。レベルも目標も千差万別ですがどの方にも共通することは「英語を通じて自己実現を図る」という点です。今回はかつて在籍された2名の大人の生徒さんについて記してみたいと思います。お二人は、同じころに相次いで入校なさった医師の方々です。どちら様も30代半ばでお一人は男性、もうお一人は女性でいらっしゃいました。ちなみにお二人は全くお知り合いではありません。偶然に入校なさった別々の生徒さんです。

当館は医療系の生徒さんがよくお出でになられるのです。医師の方も看護師さんも薬剤師さんも検査技師の方もお出でになっておられます。当館は今年で26年目になりますが医師の方は10名様ほどいらっしゃったでしょうか。看護師さんは20~30名様くらいはいらっしゃると思います。

さて、お二人は医師になられたほどの方々ですから学業優秀な才人・才媛でいらっしゃることは言うまでもありません。しかしながら入試は総合点です。「得意科目の数学や理科で加点して入試を突破したが実は英語は苦手意識がある」という方は少なくないのです。男性医師Aさんから頂いたメールには「なかなか一歩を踏み出せずにおりました。私にとっては勇気を持ってメールを出した次第です」、女性医師Bさんから頂いたメールには「英語から遠ざかった生活をしております。受験生の方やハイレベルの方に比べたら英語力は恥ずかしいものと思いますがもう一度頑張りたいです」と記されていました。エリートとして第一線でご活躍なさっていらっしゃいます医師の方々が飾らないお言葉で正直な胸の内を語っておられます。これほど胸打たれる言葉はありませんでした。

空き枠をお持ちいただきますこと1年、いよいよお二人が当館に通い始められました。ブランクも長くていらっしゃいますから英語の根本からやり直しました。どちらの方も素晴らしい集中度で食い入るように学び取っていかれます。ご姿勢も素晴らしいのですが、溢れわく才能の発露にも驚かされるばかりです。舌を巻く、感心するどころの騒ぎではありません。人間の持つ可能性とはこれほどまでに高きものなのかと思わずにはいられません。

例えば現役の高校生の方でも東大や医学科に行くような方は素晴らしい才能が溢れ湧いています。ただ、やはり少年なので人間力や経験力の上では「子供らしさ」が残ります。一方、大人の方は「元々あった高度な才能」に「大人としての人間力」が加わりますから総合力では高校生を上回ります。

しばらくすると「湯川博士は日本でノーベル賞を得た最初の人だった」「 グランドキャニオンを訪れた人で誰がその雄大な眺めを忘れることが出来ようか?」「コンサートの入場券をほしい方は誰でもまずこちらに電話をして頂かねばなりません」な~んて日本語をスラスラと英語にされていました。素晴らしいです。学生時代に積み残した「英語という落とし物」を大人になってから「見つけ出す旅」の素晴らしさを身をもって具現なさった生徒さんたち。心からの敬意を感じずにはいられません。教室冥利に尽きる思いでした。


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