リスニングの真実/苦手が満点に
大手予備校に勤務していた頃、呉西方面で大学進路系の会合があったのであります。当時当館は予備校長でしたので招かれて出席しました。会合後に国立高岡短大(今は国立富山大学芸術文化学部に改編)の学長先生が当館に話しかけて来られました。「今年、本学への受験志望者が激増したのですが何故ですか?」「あー、それは簡単なことです。」と以下のような説明をしました。
大学入試共通テスト(旧センター試験)は年によって平均点が変動します。ときには50点~60点もの上下が出ることもありますが、その動きに関して生徒さんや親御さんは誤解しがちですので注意が必要です。
平均点が上がった年(=試験が簡単になった年)は浪人が増えます。
平均点が下がった年(= 〃 難しくなった年)は浪人が減ります。
逆に感じませんか?
生徒さんや保護者の方の心理は次のように動きます。
平均点が下がった年:
「点数が取れなかった、もう駄目だ、あきらめて志望校を下げて安全校を受けよう」
平均点が上がった年:
「おーやった!こんなに取れた、思い切ってハイレベルの大学を受けてやれ!」
しかし日本中の全員が「思ったより悪かった/良かった」のです。自分だけではありません。結果として皆が安全パイを目指した前者は浪人が減り、皆が無理した後者はボロボロと浪人が出ます。
冒頭の話に戻りますが当時の国立高岡短大は国公立系では最も偏差値の低い大学でした。丁度、その年のセンター試験は平均点が大暴落し騒ぎになっていました。点数の悪化に自信を無くした多くの受験生が安全パイを求めて殺到したのです。ちなみにその年の高岡短大の倍率は史上最高だったやに記憶しています。学長先生は「なーんだ、そういうことか、よく分かりました。本学の取り組みが評価されたわけではないのですね・・」と苦笑なさっておられました。
平均点が大幅下落した年は(皆が敬遠しがちな)レベルの高い大学がねらい目なのです。ことほど左様に入試にはカラクリがあります。素人考えで一喜一憂しないことが大切です。
ps
学長先生は「僕も浪人したんです。だから予備校には親近感があります」と色々お話をして下さいました。「高校時代は山登りばかりしていた。全く勉強しなかったので案の定、浪人。浪人の1年は必死で勉強した。甲斐あって京大に受かった~云々~」。学長先生というと気難しいお爺さんを想像しますが全く趣が異なる「型にはまらない」「明るい」方でありました。上記の件にしても予備校に問いかけて話を聞こうとなさるご姿勢が柔軟ですよね。「何を言うか、失敬な・・」とは考えずに「なーんだ、そういうことか・・」と納得なさる「聞く姿勢」が素晴らしいと思うのです。ちなみに体調を崩していらっしゃって当日も鼻にチューブを通しておられました。それから程なくして亡くなられた旨を新聞報道で知りました。「良い人ほど早く亡くなる」は本当なんだと思ったのを覚えています。
夢に向かって