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臥薪嘗胆

2016年3月12日 公開 / 2016年3月13日更新

コラムカテゴリ:スクール・習い事

 
以下は1年前に記した文章の一部です。

旧帝大の名門である北海道大学の文学部に合格したAさん。
金沢大学の工学部に合格したB君。
富山大学の理学部に合格したCさん。

そのどなたもが浪人を決めました。
合格した大学には進学せず、にです。

いずれ劣らぬ名門揃いであり合格するのは決して容易なことではありません。
しかし敢えて浪人する道を選んだ彼ら・彼女ら。

~ 中 略 ~

大学全入時代と言われる当節は学生が集まらず潰れる大学さえ出ています。
しかし、上位層に限っていえば決して易化はしていません。
「入れたところに行った」時代から「入りたいところに行く」時代に変わっています。
県内屈指の難関高のT求科で40名中16名が浪人するなどということが現実に起きています。
彼らは「行ける大学」は山ほどあります。
しかし妥協に甘んずることを決然として排した結果が大量の浪人を生んでいるのです。


このお三方のうちB君が、浪人生として、引き続き当館へ通われました。

実は順風満帆なスタートではありませんでした。
彼には迷いがあったのです。

というのは再起のスタートを切った春先、取り組みに中途半端さが見られました。
入試を間近に控えた高3生の時のほうが覇気と集中力に満ちていました。



金大を蹴ったことが本当に正解だったのか、はたまた次なる高みに到達できるのだろうか・・

「金大でも良かったんだろう? 回りの期待に応えねばならないプレッシャーも浪人への引き金だったんじゃない?」
と尋ねました。
しばらくうつむいていた彼は小さな声で「・・ はい 」と答えました。

人生における大きな流れがあります。

今までに行なったことのない決断をくださねばならない時があります。
18歳の胸には大きすぎるプレッシャーであったと思うのです。
人間の心とはカッコイイばかりではありません。
弱さもずるさも併せ持って当たり前です。

できれば見たくない、受け入れたくない心のヒダは誰にでもあります。
しかし、あえて自分の弱さと迷いを受け入れること。
そしてそれと向き合い、自分を理解して先へ進むことは大切なことです。

彼が迷いを見せたのはこの時が最後でした。
ひとが変わったように黙々と取り組み出しました。

夏頃だったでしょうか。
彼に「浪人生と現役生の最大の違いは何だ?」と問うたことがあります。

しばし沈思ののち「豊富な経験と高度な問題解決能力でしょうか?」と答えました。

「普通のことが普通にできること。言い換えれば完全なる基礎力だ。
 プロたる浪人生の強さは一分の隙もない完璧な基礎力だ。
 スポーツでも音楽でも一流のプレーヤーほど完璧な基礎力を持っている。
 素人に限って基礎がデタラメ。
 難問を解き切る能力は基礎問を1題も間違えない土台の上に成り立つ」

彼とは徹底的に基礎の叩き上げを行ないました。
予備校にも通っていますから放っておいても難問演習は行ないます。
むしろ当館では予備校では手の回らない細かなことを主眼にしました。

センター試験は190点でした。
昨年は160ほどですから浪人の面目躍如です。
そして遂に、当初から目標に掲げていた第1志望校「東北大学薬学部」に合格を果たしたのです。

「医歯薬」という言葉があります。
「医歯薬」専門の予備校もあったりします。
つまり抜きん出て難しいのです。

同じ大学でも他の一般学部よりダントツに難しいのが「医歯薬」系統です。
合格できるのはほんの一握り、並大抵のことではありません。
しかも旧帝国大学の雄たる東北大学の薬学部ですからその難関度は恐るべきものがあります。

音楽家がコンクールを目指すように、球児が甲子園を目指すように、パイロットが大空を目指すように、
浪人生が合格大学を蹴って東北大薬学部を目指すことは輝ける人生の1ページです。

合格の二文字以上に人生に於ける不滅の価値と経験を得たB君に心よりのお祝いを申し上げたいと思います。
おめでとうございました。






青葉城の地へ

  

この記事を書いたプロ

上野伸彦

英語個別指導のプロ

上野伸彦(英語の以学館)

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