リスニングの真実/苦手が満点に
当館の生徒さんが今般の大学入試センター試験で満点(英語)を取られました。
これまでにも190点台を取られる方は何人もいらっしゃったのですが、満点は初めてです。
ちなみに大手予備校に勤務していた時代、若手講師が研修を兼ねてセンター問題を解いたりしますが、実は、満点はなかなか出ません。
197点とか198点どまりであることが多かったです。
現役生が満点を取ったのは快挙と思います。
彼は県内有数の進学校の探究科(昔の理数科に相当)に在籍する男子生徒です。
彼との出会いは5年前の2009年12月、彼が中2の冬でした。
持って生まれた類い稀なる優秀な才能と素直で明るい人柄に胸打たれたのを覚えています。
サッカー部のキャプテンもつとめた彼は文字通り文武両道の逸材です。
当時、学校の勉強は瞬時に仕上がる才能がありましたので、つまり才能が有り余っていたので英検を目指しました。
すぐに準2級に合格、さらに2級を目指して研鑽を積み、中3時点で余裕の合格を得ました。
これまで普通に中学の勉強をしていた生徒さんにとって高卒(=大学入試)レベルである2級は決して楽な道ではありません。
どんなに優秀な生徒さんでも初めてぶち当たる大きな壁なのです。
彼も最初は、一気に難化したレベルに戸惑っていました。
例えば、長文問題は時事問題を扱うような本格的なものになります。
単語も子供言葉から大人言葉に変わります。
しかし、真摯な取り組みと豊かな人間性で前向きに取り組む彼は、1回毎に進化していくのが手に取るように分かりました。
最初は解けなかった長文問題を、次には、私が与えた基礎と考え方を応用して解いてみせるのです。
道筋をもらったあとに、「じゃあ、~~」と正解を言い当てた彼の素直さと優秀さに舌を巻いたのを覚えています。
そういえば、興味深いことがありました。
高校受験も近づいた頃です。
お母様から電話を頂いたのですが、内容は「受験は大丈夫か?」というようなことでした。
驚きました。
彼は飛び抜けたハイレベルの生徒さんです。
そういうレベルの生徒さんにとって高校入試はたやすいものです。
「お茶の子さいさい」です。心配など微塵も必要ありません。
太陽が西から昇ることはあっても彼が高校入試に失敗することはあり得ません。
こんなレベルの生徒さんでも親御さんは心配なさるのだ、と逆に驚いたのです。
高校でも優秀な才能を遺憾なく発揮されてきた彼ですが、一方で、いつも余裕をもっていました。
いつだったか、お母さんと話す機会があったときに「随分のんびりしているのだが、大丈夫なのか?」と言われたことがあります。
その時に申し上げたのは、「本当に優秀な生徒さんはアクセクしないものです。例えば伸び切ったゴムは切れるしかありません。一方、タワンタワンに緩んだゴムは決して切れることがありません。最後にギュッと引っ張れば一気に力がみなぎって張り詰めます。今から自分を見失うようなガリ勉をしているようでは、今は乗りきれても、長い目で見て最後の大きな結果は生まれません。」ということでした。
もうひとつ印象に残っていることがあります。
当館では受験本番への備えとして防衛大学の受験を薦めています。
時期は高3の11月になります。
つまり、実際の本番入試を他者にさきがけて経験することによって、経験力を増し、来るべき入試への自分づくりを確かなものにするのが目的です。
その願書に貼る写真は例年、私が撮影しています。
今、手元にデータが残っていますが、彼はにこやかに嬉しそうに微笑んでいるのです。
この人柄の良さ、笑顔を忘れぬ度量。
全てがセンターで満点を獲得する大切な一歩一歩だったと思うのです。
春近し