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組織を長久に保つ心得「居安思危」について掘り下げよう|帝王学の教科書『貞観政要』を読む⑤ー3

都泰寛

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テーマ:貞観政要

治国と治病とは、異なるなし|その心とは

 今回から、帝王学の教科書『貞観政要』政體篇に入っていきます。今回に関しては、先回お話した組織を長久に保つ心得「居安思危」―安定している時ほど非常事態に備えておく―を、掘り下げる内容となっております。さっそく見ていきましょう。

国を治めることと病を治すことが同じこと!?

 病気をしたことがない、医者にかかったことがない―稀にそんな超健康優良児もいらっしゃいますが、大半の人はそうではないでしょう。小生も皮膚が弱いほうで、疾患には悩まされます。では、病気にかかった際の大事な心得と言えばなんでしょう?

 「治りかけが肝心」ですね。インフルエンザのような強力な病気は言わずもがな、疲労や不規則な生活などに起因する単なる風邪なども、治りかけが大事になります。理由は単純で、「最も油断する時」だからです。症状が治まりつつあっても、体力は戻っていません。そこで調子に乗ると、再び悪化して長く苦しむことになるわけです。時と場合によっては命を落とすことにも…故に、病状が安定してきた時こそが、より一層慎んで行動するべき時となります。

 国―組織を治めていく際にも、まったく同じ心であたることが重要です。安定してきた頃合いこそ、最も注意を払うべき時。ここで万一の場合を考えて備えることなく、

  • 驕り高ぶる
  • 調子に乗る
  • 油断する

このようなことになるとどうなるか。必ず瓦解に至ると太宗は説きます。個人であれば、敗北や失敗につながるということです。拙著『人格修養のすすめ』では、事例としてセコム創業者・飯田亮の自戒の言葉を取り上げています。よろしければご参照ください。実際に大失敗してしまった体験談ですので、重みが違います。この「居安思危」の心得の重要性も、併せて深めることにもなりましょう。
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身近な事例・運転免許

 運転免許は、非常になじみがある事例となります。皆様よくお分かりではないでしょうか。1番事故を起こしやすい時期はいつでしょう?「初心者マークが外れた頃」ですね。治国や治病とまったく同じように、安定してきた頃合い―慣れてきた頃が最も危ないのです。これこそ、先人が「安きに居りて危きを思ふ」という心得を常に保ちなさいよ、と説く所以であります。

部下が求めに応じてくれる、そんなリーダーを目指そう

 太宗は今回の言葉の締めくくりとして、「思っていることや問題点・改善すべき事柄などは、隠すことなく憚ることなく直言してほしい」と述べています。腹を立てることもたびたびあり、聞き入れないこともあった太宗ですが、この諫言を求め、聞き入れようとする姿勢は一貫していました。小生も一貫して説くことの1つが、「直言してもらえるリーダーを目指しなさいよ」です。外(他人)ではなく、内(己)に目を向けるのが帝王学人に求めるあらば、まずは自分から。それが、リーダーシップを発揮するにあたり重要な姿勢であり、組織マネジメントに不可欠な要素です。
 最後に、この章でお勧めの文言を紹介して、今回はここまでといたします。

◎日慎一日(日に一日を慎む)…日を増すごとに用心する。
◎義均一體(義、一体に均し)…義の観点から言うところの、君臣閒の一心同体の関係。

今回の原文

國を治むると病を養ふとは異なること無きなり。病は人愈ゆるを覺ゆれば、彌須く將護すべし。若し觸犯有らば、必ず命を殞すに至らん。國を治むるも亦然り。天下稍安ければ、尤も須く兢愼すべし。若し便ち驕逸せば、必ず喪敗に至らん。(中略)事、安からざる有らば、極言して隱すこと無かる可し。(原田種成・著『貞観政要』66頁)

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専門家

都泰寛(講師)

株式会社因幡古典探究舎

漢学や古典を多様な視点からわかりやすく読み解き、ことわざや近現代の書籍、ビジネス書なども活用して講座や勉強会を開催。教養や読解力を身に付けるだけでなく、教育やビジネス、実生活に役立つ学びの場を提供。

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