リーダーに最も必要となるもの|最高の戦略教科書『孫子』を読む⑪
書誌情報
書名:『帝範 帝王学の中の帝王学』
著者:坂田 新
出版年:昭和56年
出版社:竹井出版
概要
帝王学の教科書と言えば『貞観政要』である。これは唐の中宗から玄宗にかけて仕えた呉競が編纂した歴史書に対し、『帝範』は太宗自ら筆を執ったもの。名君の手による帝王学の指南書であり、『貞観政要』と比べて分量はかなり簡潔なものになっている。
1章では隋末から貞観の治を略説し、2章から本題の『帝範』の現代語訳が始まる。2章の構成は現代語訳→原文→書き下し文→語釈となっており、語釈は詳細なものがつけられている。漢学の初学者にはいささか難易度が高いか。帝王学を学びたいだけなら、現代語訳のみ通読するのが良いかもしれない。
坂田先生も述べているとおり、『貞観政要』と併せて学ぶことをお勧めする。『貞観政要』と違い、『帝範』は現代語訳されたものが少ない。これはイチオシの1冊である。
余談だが、拙著『人格修養のすすめ』の帶に記載している「身を修め、組織を治むるの要諦、この中に在り」は、太宗が皇太子・李治に『帝範』を与えた際に述べた「修身治国、備に其の中に在り」からとったもの。帝王学の本質を表現しているが、このことがすぐにピンときた人は、小生が師と仰ぐべき存在である。



