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「身を修める」とは|帝王学の教科書『貞観政要』を読む③ 番外編

都泰寛

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テーマ:貞観政要

帝王学の教科書『貞観政要』を漢字二字で

 『貞観政要』に説かれる教えは、一言で表すことができます。お分かりでしょうか?ズバリ、「修身」これです。「修身」と「道徳」の違いを尋ねる方もいますが、異なるものではありません。『貞観政要』を叩けば「修身」の二文字となり、この二文字を開けば『貞観政要』となります。なぜなら、『貞観政要』に説かれているリーダーシップや組織マネジメント―

  • 人を心から大事にする
  • 誰彼の隔てなく意見を求める
  • 全幅の信頼を寄せられる
  • 公正明大な信賞必罰

これらはみな、「身を修める」より派生するからです。この故に、『貞観政要』の中で魏徴は、古代中国・楚の賢人である詹何(せんか)の逸話を引き、太宗・李世民の言葉に賛同しているのです。

信頼されるリーダーになるには

 リーダーシップを発揮するには、信頼を欠かすことはできません。どんな手腕や能力の持ち主であっても、信頼なき人間には誰もついていかないからです。自身に置き換えて読んでみると、上記の要素は特別なものではないことがお分かりになりましょう。

  • 形だけ大事にしているように見せかけているリーダーに、ついていきたいですか?
  • 同じ人の意見にしか耳を傾けないリーダーに、ついていきたいですか?
  • 常に言行不一致のリーダーに、ついていきたいですか?
  • 私情で誉めたり罰したりするリーダーに、ついていきたいですか?

答えは明らかではありませんか?身を修めるとは、人格を陶冶すること。学びと実践を両輪の如く進めることで、修身がなされたリーダーとなることができます。
 身を修めているならば、当然謙虚さをもっています。「実るほど頭が下がる稲穂かな」おかげさまで、という謙虚の心があれば、自ずと人を大事に思います
 人を大事に思えばこそ分け隔てなく意見を尋ねようという心が起きてきます
 人を大事に思って行動すればこそ自ずと周囲から絶大な信頼を寄せられます
 人を大事に思えばこそ贔屓無き公正さを意識するようになり、働きには相応に報い、罪には罰やその後のフォローなどで応えます
 経営者やリーダーが求めて止まない、経営に必要となるリーダーシップや組織マネジメントは、この「身を修める」ことから派生する…その一端が伝わるでしょうか。これらが漏れなく凝縮されている『貞観政要』が、「帝王学の教科書」の名を冠する所以が伝わるでしょうか。是を以て、小生は拙著『人格修養のすすめ』の当該部分において、かつて教育で使用されていた『尋常小學修身書 兒童用』を引いているのであります。

             小生蔵書 『尋常小学校修身書』復刻版

誠は天の道―普遍的な人の道を身につけよう

 帝王学とはこのような性質のものであります。即効性はないとお話する所以です。子供から大人まで踏むべき道であり、それは帝王学へつながっていきます。特段難しいものではないのです。
 今回は番外編として、帝王学の教科書『貞観政要』の「身を修める」についてお話しました。まだまだ足りないですが、今回はここまでといたします。もっと知りたい・学びたい方はお気軽にお問い合わせください。
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専門家

都泰寛(講師)

株式会社因幡古典探究舎

漢学や古典を多様な視点からわかりやすく読み解き、ことわざや近現代の書籍、ビジネス書なども活用して講座や勉強会を開催。教養や読解力を身に付けるだけでなく、教育やビジネス、実生活に役立つ学びの場を提供。

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