帝王学の教科書|『貞観政要』を読む①
帝王学の教科書『貞観政要』を漢字二字で
『貞観政要』に説かれる教えは、一言で表すことができます。お分かりでしょうか?ズバリ、「修身」これです。「修身」と「道徳」の違いを尋ねる方もいますが、異なるものではありません。『貞観政要』を叩けば「修身」の二文字となり、この二文字を開けば『貞観政要』となります。なぜなら、『貞観政要』に説かれているリーダーシップや組織マネジメント―
- 人を心から大事にする
- 誰彼の隔てなく意見を求める
- 全幅の信頼を寄せられる
- 公正明大な信賞必罰
これらはみな、「身を修める」より派生するからです。この故に、『貞観政要』の中で魏徴は、古代中国・楚の賢人である詹何(せんか)の逸話を引き、太宗・李世民の言葉に賛同しているのです。
信頼されるリーダーになるには
リーダーシップを発揮するには、信頼を欠かすことはできません。どんな手腕や能力の持ち主であっても、信頼なき人間には誰もついていかないからです。自身に置き換えて読んでみると、上記の要素は特別なものではないことがお分かりになりましょう。
- 形だけ大事にしているように見せかけているリーダーに、ついていきたいですか?
- 同じ人の意見にしか耳を傾けないリーダーに、ついていきたいですか?
- 常に言行不一致のリーダーに、ついていきたいですか?
- 私情で誉めたり罰したりするリーダーに、ついていきたいですか?
答えは明らかではありませんか?身を修めるとは、人格を陶冶すること。学びと実践を両輪の如く進めることで、修身がなされたリーダーとなることができます。
身を修めているならば、当然謙虚さをもっています。「実るほど頭が下がる稲穂かな」おかげさまで、という謙虚の心があれば、自ずと人を大事に思います。
人を大事に思えばこそ、分け隔てなく意見を尋ねようという心が起きてきます。
人を大事に思って行動すればこそ、自ずと周囲から絶大な信頼を寄せられます。
人を大事に思えばこそ、贔屓無き公正さを意識するようになり、働きには相応に報い、罪には罰やその後のフォローなどで応えます。
経営者やリーダーが求めて止まない、経営に必要となるリーダーシップや組織マネジメントは、この「身を修める」ことから派生する…その一端が伝わるでしょうか。これらが漏れなく凝縮されている『貞観政要』が、「帝王学の教科書」の名を冠する所以が伝わるでしょうか。是を以て、小生は拙著『人格修養のすすめ』の当該部分において、かつて教育で使用されていた『尋常小學修身書 兒童用』を引いているのであります。
小生蔵書 『尋常小学校修身書』復刻版
誠は天の道―普遍的な人の道を身につけよう
帝王学とはこのような性質のものであります。即効性はないとお話する所以です。子供から大人まで踏むべき道であり、それは帝王学へつながっていきます。特段難しいものではないのです。
今回は番外編として、帝王学の教科書『貞観政要』の「身を修める」についてお話しました。まだまだ足りないですが、今回はここまでといたします。もっと知りたい・学びたい方はお気軽にお問い合わせください。



