創業と守り維持していくこと、いずれが難しい?|帝王学の教科書『貞観政要』を読む⑤
先人たちの言葉
帝王学の教科書『貞観政要』冒頭には、「君たるの道」|リーダーの心構えとして、「人を大事にすべき」ことが説かれているとはお話したとおりです。今回はその番外編として、先人たちの「人を大事にした」・「大事にすべき」ことを教えた言葉を紹介しておきましょう。
拙著『人格修養のすすめ』にも多く取り上げていますので、ここではそこに載せきれなかったものを見ていきましょう。
日産コンツェルン創業者・鮎川義介の言葉
日本は領土や物的資源に恵まれぬ代りに、世界無比の万能工業人の種子を余るほど授かっている。これこそ語弊があるかもしれぬが、唯一の尊き資源でなくて何であろう…」(日本経済新聞社・編『私の履歴書』9巻 40頁)
2万人の人員削減や、追浜工場のような主力工場閉鎖を進める日産社長のエスピノーザ氏は、鮎川義介のこの言葉を知っているのでしょうか。
京セラ創業者・稲盛和夫
全従業員の物心両面の幸福を追求する。(前掲『私の履歴書』36巻 194頁)
稲盛和夫氏が掲げていた、京セラの経営理念です。
出光興産創業者・出光佐三の言葉
事業は飛び借金は残ったが、出光は海外に八百名の人材がおる。これが唯一の資本であり、これが今度事業をつくる。人間尊重の出光は終戦にあわてて馘首してはならぬ。(出光興産株式会社・編『出光五十年史』544頁)
終戦で国内外の全ての資産を失った出光佐三。残ったのは260万円の借金(プロジェクトX放送時期の換算で数十億円。現在だとさらに跳ね上がる)と1000人の復員社員。ここから逆転できたのは、偏に、この「人を大事にした」姿勢に由ります。
実業家・大倉喜八郎の言葉
事業の成否は多く人にある。(東京経済大学史料委員会・編『大倉喜八郎 かく語りき』90頁)
組織運営の要は「人」
拙著『人格修養のすすめ』と合わせるとそこそこの事例集となりますが、いかがでしょうか。この「人を心から大事にする」―「君たるの道」は帝王学の要であり、名君たちに共通する要素の1つです。「組織は人を以て本と為す」―「以人為本」これは小生が強調する言葉になります。これからも、この番外編のような形でもお話していきたいと思います。
今回はここまでといたします。



