帝王学の教科書|『貞観政要』を読む①
風通しの良い組織・風土づくりの悩みに応える
組織の風通しについて、こんなお悩みありませんか?
- 現場の実態が不明瞭になっている…
- 部下や社員の意見が出てこない…
- 風通しの良い組織や風土をつくりたいが、どうすれば…
- 生の声が上がってくるにはどうしたら…
このお悩みに、帝王学の教科書『貞観政要』は如何に答えを示してくれるのでしょうか。さっそく見ていきましょう。
組織の風通しの良い悪いを分けるモノサシ
「風通しの良い組織のリーダー」を明君、「風通しの悪い組織のリーダー」を暗君と例えましょう。『貞観政要』では、この「明君」と「暗君」は「隔てなく広く意見を求める」か「特定の人物の意見のみ聞くか」で分けられると説かれます。これを原文では「隔てなく意見を求める」ことを「兼聴」、「特定の人物の意見のみ聞く」ことを「偏信」と教えられます。多くの人の意見を兼ねて聴くから「兼聴」、特定の人の意見を偏って信じるから「偏信」というわけです。分かりやすいですね。
風通しが良くならない民族性を踏まえよう
中国の場合、絶対的な専制君主制の元では、迂闊な一言や機嫌を損ねる発言は「死」に直結していました。事実、多くの臣下が、主君を諫めて命を落としています。意見を上げるということは、まさに命懸けの任務だったのです。余程豪胆な臣下か、或いは明君・賢君でない限りは、率直な意見など出ようはずがありません。古代中国においては、リーダー側の「虚心坦懐に求める姿勢」と臣下側の「犯顔(※)」の姿勢が揃ってようやく、「風通しの良い組織・国家」となったのです。
日本の場合は異なります。ビジネスに限りませんが、率直な意見や、然るべき根拠に基づく反対意見というものは有り難いものです。我々日本人は、「本音」と「建前」の民族。兎角「思ったことがあっても言わない」…波風を立てない態度が社会人としての常識―良くも悪くも、それが日本社会でありましょう。だからこそ、上記のような意見を言ってくれる存在は、まさしく「人財」となるのです。
内に目を向けて、「明君」を目指そう!
風通しの良い組織・風土をつくるにはどうしたら?という疑問に対し、『貞観政要』は「誰彼の隔てなく意見を求めることだよ」と答えを示してくれています。聞いても本音が出て来ないから、聞ける方法が知りたい?そのお悩みには以下のコラムをご覧ください。
コラム|古典に基づくリーダーシップと組織マネジメント
普段から意見を受け入れる姿勢を見せてこなかった者が、いきなり思うところを聞かせてくれと言って、言ってくれるはずがありません。どうせ聞いてもらえない・却下される…部下や社員をそんな後ろ向きにしたのは一体誰でしょうか?外(社員や部下)に向いている目を内(己自身)に向け、反省と身を修めることをセットで磨き上げていく。「自分は本気で変わろうとしているんだぞ」という心を、姿にかけて見せましょう。必ず、彼らは応えてくれるようになります。『貞観政要』が読めない原因の1つとして解説したとおり、「心」が欠けているリーダーは形だけの行動になるため、この隔てなく意見を求めるのもうまくいかないのです。
自分が変われば、人も変わる
意見を出すように「人を変える」のではなく、意見が出て来るように「己が変わる」。これが、帝王学の教科書『貞観政要』を一貫する「組織の成否はリーダー次第」です。このことを解説したのが、拙著『人格修養のすすめ』になります。傍に置いて、学んでみませんか?
興味がある方やもっと学んでみたい方は、お気軽にお問い合わせください。今回はここまでといたします。最後に、今回の『貞観政要』の原文を掲載しておきます。
※犯顔…顔(かんばせ)を犯すと読む。主君が機嫌を損ねたり嫌な顔をしたりしても、恐れず直言すること。
君の明らかなる所以の者は、兼聽すればなり。其の暗き所以の者は、偏信すればなり。詩に云く、先人言へる有り、芻蕘に詢ふ、と。(原田種成・著『貞観政要』32頁)



