帝王学を、鈴木貫太郎の奉公十則をとおして学ぼう 3-2
法令を明知し誠實にこれを守るべし
自己の職分は嚴にこれを守り他人の職分はこれを尊重すべし
今回は鈴木貫太郎の奉公十則の7番目、法令を明知し誠實にこれを守るべし、自己の職分は嚴にこれを守り他人の職分はこれを尊重すべしをとおして、「法令」についてみていきましょう。長すぎて中見出しに入り切らなかったため、分割しています。長いですが、これで1つです。
統治の基本形態・法治
世の中のことは、基本的に集団・組織で動きますので、明文化された決まり事はどうしても必要になります。所謂、法治ですね。東洋においては、古代中国の韓非子に代表される法家思想に、その源流を見ることができます。秦は法家思想を採用し、法治国家として基盤を確立させて天下を統一したものの、その運用があまりにも度を越えていたがために、長続きしなかったことは周知の事実ですね。
『孫子』の五事の1つ、「法」の利
『孫子』に、「五事」という教えがあります。これを知る者は勝ち、知らない者は負けるという五つの要素ですが、その中の1つが「法」の利です。禁止事項や信賞必罰に関わるものなど、基本的なことは定めておく必要がありますが、繫文縟礼は避けるべきものであります。漢の高祖・劉邦の「法三章」と秦の法とは両極端ですが、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」―可能な限り簡素なものが理想です。あくまでも仁徳による統治に重きをおき、法は足りないところを補うような運用を目指すべきでありましょう。
さて、先ほど「五事」について「これを知る者は勝ち、知らない者は負ける」と言いましたが、これはまたリーダーが備えるべき要素でもあります。もうお分かりかと思いますが、人に規則を守るよう行動してほしいならば、まずは自分が法令をよく知り、守らなければなりません。自分がよく分かっていないのに、人に規則を守るように言ったところで、守られることはないわけです。やはり、率先して範を示すこと。規則が形骸化している時は、往々にして、上に立つ者が遵守していないと相場が決まっています。
まずは、自らが手本となること。心掛けることで、周囲も変わっていきますよ。後半部分はまた次回以降に―今回はここまでといたします。



