Mybestpro Members

都泰寛プロは山陰中央新報社が厳正なる審査をした登録専門家です

帝王学を、鈴木貫太郎の奉公十則をとおして学ぼう5-2

都泰寛

都泰寛

テーマ:奉公十則

言行一致を旨とし議論より實践を先とすべし

 今回は前回の続き、鈴木貫太郎の「奉公十則」の5番目、「言行一致を旨とし議論より實践を先とすべし」の後半部分をみていきましょう。

紙陣を離れよ

 兵証書に、「紙陣を離れよ」という教えがあります。兵書や経書といった典籍に教えられる知識は必要であり、また大いに役立つものではありますが、あくまでもそれは原理原則です。これを踏まえておかないと応用は利きませんし、マニュアル的な運用をしようものなら必ず失敗します。実践よりも議論に重きを置き、知識のマニュアル的運用を行った結果、取り返しのつかない事態を招いた事例があります。

長平の戦い~紙陣を離れなかった愚将の末路

 キングダムにもしっかり描かれている、秦と趙との間で行われた長平の戦い。趙には馬服君・趙奢(ちょうしゃ)という名将がいましたが、その息子・趙括(ちょうかつ)は、父親とは比ぶべくもない無能でした。兵法に関する知識は父を凌ぎ、議論しても言い負かすほどでしたが、趙奢は評価しません。戦争を軽く見ており、知識はあっても実際の運用ができる練度ではないことが、分かっていたからです。それは、重臣・藺相如も同じでした。その趙括を評した言葉・「琴柱に膠して瑟を鼓す」は、今日、「杓子定規で融通が利かないこと」を意味することわざとなっています。読みは、「ことぢににかわしてしつをこす」です。

趙の惨敗~生き埋めにされた40万の趙兵

 秦将・白起はその無能さを利用し、趙王に工作を仕掛け、総大将を趙括に交代させます。将兵を使い捨ての駒のように考え、原理原則を踏まえて運用する能力がなかった趙括に、名将・白起を相手にできるはずもなく、みっともない戦死を遂げます。降伏した趙兵40万は、生き埋めにされたと伝えられます。簡単ではありますが、これが長平の戦いの顛末です。

実践を旨とすべし

 さて、知識だけ蓄えて知った分かったつもりになっているのを、「論語読みの論語知らず」というのは、何度か述べてきたとおりです。帝王学は、とかく学びと実践とが対になる学問教養。実践躬行してこそ始めて価値がある―これを忘れぬよう、日々励みたいものです。それを高橋是清が指摘していますので、それを紹介して今回はここまでといたします。

學問は古來幾多の先輩が啓發して集めたもので、唯學問を學修したと云ふのみでは、先輩が遺した図書にも及ばぬと云ふことになる。學問は之を使つてこそ、始めて、効用がある。(高橋是清・遺著『随想録』)137頁


         引用率が高い『随想録』これもまた帝王学の書籍と言える。
随想録

\プロのサービスをここから予約・申込みできます/

都泰寛プロのサービスメニューを見る

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

都泰寛
専門家

都泰寛(講師)

株式会社因幡古典探究舎

漢学や古典を多様な視点からわかりやすく読み解き、ことわざや近現代の書籍、ビジネス書なども活用して講座や勉強会を開催。教養や読解力を身に付けるだけでなく、教育やビジネス、実生活に役立つ学びの場を提供。

都泰寛プロは山陰中央新報社が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

教育やビジネス、生き方のヒントとなる漢学の魅力を伝えるプロ

都泰寛プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼