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帝王学を、鈴木貫太郎の奉公十則をとおして学ぼう 5

都泰寛

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テーマ:奉公十則

言行一致を旨とし議論より實践を先とすべし

 今回は「奉公十則」の折り返し、5つ目の「言行一致を旨とし議論より實践を先とすべし」をみていきましょう。

信用に直結する「言行一致」

 言葉と行動とが不一致の人を、みなさんは信用するでしょうか。例えば次のような事例です。

  • 時間を守るように人には言いながら、自分は守らない。
  • 自分がされたくないことはするなと言いながら、自分はしている。
  • 約束は守れと言いながら、自分は守らない。

ダブルスタンダードとも言われますね。このようなことをしていたのでは、孤立することは免れず、また困窮した時には誰も助けてくれません。なぜか?「信用がないから」ですね。
 言葉と行動が常に一致する・させるよう心掛ければ、信頼されるのはぞんなに難しいことではありません。つまり、鈴木貫太郎が言うところの「言行一致を旨とし」とは、「信用されるよう努めなさいよ」ということに他なりません。これについて、『論語』の「公冶長篇」も併せてみておきましょう。

言行が乖離していた宰予(さいよ)

 孔子の弟子に、宰予(さいよ)という人がいました。昼寝をしていたところを師である孔子に見つかった時に

朽木は彫る可からず。糞土の牆は杇る可からず。(吉田賢抗・著『論語』111頁)

朽ちた木は彫刻できないし、土が腐ったような塀は上塗りできない―と、昼寝だけでかけられる言葉としては、いささか度を越しているような言われ方をしています。推測の域を出ませんが、宰予は日頃から、寝る間も惜しんで努力している、というようなことを述べていたのでしょうか。
 いずれにせよ、この一件から、孔子は「人の評判ではなく、実際に言動をみてその人を判断するようにした」と考え方を改めています。余程のことだったのでしょう。言行の一致が如何に大事なことか、よく分かる一節かと思います。
 信用は、人生最良の無形財産―常にお話していることですが、言行一致はそれに直結します。念頭に置き、精進したいところです。
 今回はここまでといたします。後半は、また次回以降に―

         蔵書 ミネルヴァ書房から出ている、鈴木貫太郎の伝記
著者の小堀先生の流儀で、漢字は基本的に正字体で、文体は歴史的仮名遣いとなっている。
慣れていないと難しいかもしれない。
鈴木貫太郎 ミネルヴァ書房
 

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都泰寛(講師)

株式会社因幡古典探究舎

漢学や古典を多様な視点からわかりやすく読み解き、ことわざや近現代の書籍、ビジネス書なども活用して講座や勉強会を開催。教養や読解力を身に付けるだけでなく、教育やビジネス、実生活に役立つ学びの場を提供。

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