組織運営や人材招致・教育・育成などに悩む、経営者や管理職が最後にたどり着く古典―それが『貞観政要』や『孫子』です。
新入社員の定着
新年度が始まって間もなく2ヶ月が経過します。この時期に話題になることが多いのが、新入社員の退職ではないでしょうか。規模に比例して、1人あたりに掛かる採用の費用もまた上昇します。数百万単位での損失につながっていく、この問題。昨今ではAIを導入したアンケートなどを実施するなど、それぞれ対策が行われておりますが、企業が頭を抱える問題に変わりはないようです。
短期的な効果は期待できませんが、長期的な視点で取り組んでいくならば、「帝王学」がその一助になることでしょう。
リーダーの心得…人を大事にしていますか?
帝王学の教科書『貞観政要』の冒頭に、次のような文言があります。
君たるの道は、必ず須く先づ百姓を存すべし。(原田種成・著『貞観政要』)29頁
リーダーたる者は、必ずまず人を大事にしなければならない―組織はすべて「人」で動きます。その「人」を大事にしないことは、ちょうど自分の肉を切り取って食べるようなもの。満腹になるころには倒れてしまいますね。故に、リーダーの最も大事な心掛けとして、「必ず」「まず」「人を大事にしなければならない」と説かれるのです。
文字での表記はありませんが、ここの部分について。表面上の形ではなく、「心」を教えたものであることを読み取ることができなければ、『貞観政要』は読めません。
- 帝王学の教科書と有名だから読んでみたけど分からない
- 『貞観政要』を手に取ってみたけど難しい
若手経営者の中にはこのような声が少なくないと聞きます。単に典籍として簡単ではないのもありますが、その理由はここにあります。
どうして「心」が重要なのか?
人に意見を求める時も、仕事を任せる時も、「心から」大事にしていなければ逆効果となります。人を大事に思っていなければ、せっかく意見を出してくれても、意に沿わないものであれば「言動」という形をとって現出します。
- 役に立たない
- こんなことしか出せないのか
- もっと優秀な人材がいれば
「心」が目に見えないと思ったら間違いで、見える形をとって出てきます。「無意識」に出ているところが、恐ろしいところ。気付いていないのは本人だけで、相手には筒抜けになっています。故に、姿にかけて心を見せることが大切になるのです。今回のタイトルに関わる、「新入社員の定着」には、この『貞観政要』の教えを実践していくことが、長い目でみると最も効果を発揮します。たとえやりたくない仕事であっても、組織全体が「君道」を実践することができているならば、簡単に離れはしません。机上の空論ではなく、これは歴史が証明するところ。『孟子』にも根拠をみておきましょう。
至誠にして動かさざる者は、未だ之れ有らざるなり。誠ならずして、未だ能く動かす者は有らざるなり、と。(内野熊一郎・著『孟子』 1962年発行)259頁
真心を尽くして動かない者は存在しないし、形ばかりで心が伴っていない者が、人をよく動かしたなどということは存在しない―
人は相応「にしか」応えてくれません。この記事をご覧になり、帝王学の力に興味を持ち、学んでみようと思われる方が増えてくれるならば、これに過ぎたる喜びはありません。福利厚生の観点からしても、「帝王学」は大きな力となってくれることでしょう。
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『貞観政要』を解説した拙著『人格修養のすすめ』



