組織や経営の再建で大事なこと
企業経営に欠かせない、経営哲学と経営理念
経営哲学と経営理念―似てはいますが、その違いについては難しい問題のようです。まず結論から述べますと、両者は異なるものではありますが、密接な関わりがあります。企業全体に大きな影響を及ぼすものなので、特に若手の経営者はしっかりと理解していただきたいと思います。
経営「哲学」ってどんなこと?
経営哲学と申しますのは、経営者自身の根底にある哲学を言います。これだけではイマイチ分かりにくいと思いますので、京セラの故・稲盛会長を具体例として挙げましょう。稲盛氏はその経営哲学を、社員用にまとめた小冊子の中で
人間として何が正しいかで判断する
公正、公平、誠意、正義、勇気、愛情、謙虚な心を大切にする
(日本経済新聞社・編『私の履歴書』36巻)228頁
と公表しています。帝王学の教科書『貞観政要』を学んでいると、そこに教えられている学問教養が経営哲学として結実していることが窺えます。稲盛氏の座右の書としても知られる『貞観政要』ですが、単なる愛読書に留まっていなかったことも分かります。
上記で稲盛氏が挙げているものはそれぞれ「人の道」であり、「身を修める」というものです。「身を修める」ことができているならば、我々日本人が昔から大切にしてきた美徳は、自ずと付随します。京セラもまた、多くの苦難・困難に見舞われてきましたが、人が逃げ出すことがなく乗り切ってきたのは、偏にこの経営哲学あればこそ、と言えるでしょう。これが「経営哲学」です。
経営「理念」ってどんなこと?
経営理念と申しますのは、経営哲学に立脚して打ち出された、経営方針を言います。見本のような経営理念がございます。
「全従業員の物心両面の幸福を追求する。人類、社会の進歩発展に貢献すること」(日本経済新聞社・編『私の履歴書』36巻)194頁
これは京セラの故・稲盛会長が掲げていた経営理念です。『貞観政要』冒頭にある、「百姓を存す」―人を大事にするが根底にあり、これに立脚して打ち出された経営理念ですね。
経営哲学と経営理念の違いを、その一端なりともご理解いただけましたでしょうか。掲げる経営理念によって、企業の行く末は大きく変わってきます。若手の経営者には特に、経営哲学を持ち、そこに確固たる根がある経営理念を掲げてほしいと思います。お困りでしたら、ご相談も可能です。
今回はここまでといたします。



