帝王学に資する、晏子のエピソード④
晏子の人材活用論
人材登用論に次いで大切なものが、人材活用論です。高級食材でも、素人が調理すると味を引き出せないように、人材を登用してもその用い方によっては力を発揮できないどころか、見限られて去ってしまうことにもなりかねません。
「驥服塩車」という四字熟語があります。千里を走る名馬が、塩を満載した荷車を引かされている状況から、活用の仕方が適切でないことを表していますが、このようなことでは組織力を引き出すことはできません。そこで今回は、晏子が人材活用論も述べていますので、共に学んでいきましょう。
景公の下問
景公が、昔の君主は人に仕事を任せる際にはどのようにしたのか―晏子に尋ねたことがありました。それに対する晏子の答えは、次のようなものでした。
人の長に任じて、其の短を疆ひず、人の工みに任じて、其の拙きを疆ひず。此れ人に任ずるの大略なり。(谷中信一・著『晏子春秋』上巻)296頁
(現代語訳)
人の長所に任せて短所を無理強いせず、得意に任せて不得意を無理強いしないこと。これが、人に仕事を任せるときの大原則です―
そんなことか―落胆する人もいるかもしれません。しかし、「そんなこと」が当たり前にできている組織がどれほどあるでしょうか。「役に立たない」「使い物にならない」といった言葉が聞かれる場合、長短所や性格をまともに把握できておらず、得手を捨てて不得手なことをさせている状況がほとんどです。そうでなければ、単に人を大事にしていないか―そのいずれかになります。『戦国策』にも、まったく同様の言葉がありますが、それだけでき難いということでしょう。
彼を知り、己を知らば、百戦して殆ふからず
適材適所の配置をしたいならば、「彼を知る」ことが大前提です。『孫子』のこの一節を、市場調査や自社の強みを知ることばかり強調するビジネス書が多いですが、組織内部の「人」を知ることもたいへん重要なことになります。これをしないことには、組織力を引き出すことはできません。『孫子』にも通じる晏子の人材活用論―是非とも組織運営に取り入れてみてください。
蔵書 新編漢文選『晏子春秋』



