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帝王学に資する、晏子のエピソード③

都泰寛

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テーマ:晏子春秋

「まことの威厳」を学ぼう

 景公が君主として威厳を出そうとして、朝廷の場にて厳粛に振舞っていた時のことです。それを見た晏子は

  • 朝廷で厳粛さを出そうとすると、臣下が恐れ何も言わなくなってしまう。
  • 進言や諫言が為されないことは、国家への害以外、何ものでもない。

と諫言し、改めさせた逸話が伝わっています。この時の晏子の言葉、

夫の天下を治むる者は、一士の言を用ふるに非ざるなり。固より受けて用ひざること有るも、惡んぞ拒みて受けざる者有らんや。(谷中信一・著『晏子春秋 上巻』)187頁

(現代語訳)
天下を治める者は、一人の言うことのみを聞くものではありません。聞いて採用しないことはあっても、どうしてはじめから拒んで聞かないことがありましょうか。

 これは『貞観政要』に説かれている、広く意見を求める「兼聴」の要諦を明らかにした名言であり、リーダーたる者は心にかけるべきものであります。意見や進言・諫言といったものが出ない事態は、まったく必要がない場合を除いて、組織にとって大なる損害であることを忘れてはなりません。

似て非なる「威厳」と「ただの圧力」

 『貞観政要』には、太宗・李世民の、皇帝としての威厳があり過ぎて、臣下がうまく話せないことが多かったため、意識して顔つきを和らげるようにしていた逸話が記されています。「威厳」と「ただの圧力」とは似て非なるものであることを理解しておきたいところです。初めの見出しにも掲げました、「まことの威厳」の何たるかについて、名将・島津義弘に聞きましょう。その言葉をもって、今回はここまでといたします。

誠の威と曰ふは、先づ其身の行儀正しく、理非賞罰明かなれば、強て人を叱り喝す事はなけれども、臣下萬民敬ひ恐れて、上を侮り法を輕しむる者なくして、自ら威備はるものなりと。(岡谷繁實・著『名将言行録』前篇 1896年発行 文成社)929頁

(現代語訳)
「誠の威厳」というものは、まず身を正しくすること。そして物事の是非・信賞必罰が明らかであれば、人を叱り飛ばすようなことをしなくとも、臣下から万民に至るまで敬い恐れるようになり、君主を侮って法を軽んじる者もいなくなる。このようにして、「誠の威厳」とは自然と備わるのである。
            蔵書 新編漢文選『晏子春秋』上下巻
蔵書・新編漢文選『晏子春秋』

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都泰寛(講師)

株式会社因幡古典探究舎

漢学や古典を多様な視点からわかりやすく読み解き、ことわざや近現代の書籍、ビジネス書なども活用して講座や勉強会を開催。教養や読解力を身に付けるだけでなく、教育やビジネス、実生活に役立つ学びの場を提供。

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