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知って損はない故事成語―「折檻」

都泰寛

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テーマ:故事成語

 「折檻」という言葉は、「虐待」の意味で使われることが多いのではないでしょうか。どのような経緯でそのような意味に転化したかは不明でありますが、これは誤用になります。では、その成り立ちとなった故事をみていきましょう。

皇帝を激怒させた、朱雲の意見書

 古代中国、前漢の成帝(せいてい)という皇帝の時のお話です。ある時、朱雲(しゅうん)という、今の県知事のような人物が上書(※)しました。
 「皇帝に阿(おもね)り諂(へつら)う者の首を斬馬刀で刎ね、その余の者を励ましたい」という過激なものでしたが、成帝には心当たりがありませんでした。朱雲の口から飛び出したのは、「安昌侯(あんしょうこう)の張禹(ちょうう)」。何と成帝の指南役だったのです―

※上書…皇帝に意見書を奉ること。

死刑宣告・その即時執行―諫言を止めない朱雲

 よりにもよって自身の師匠であり、それを重臣が居並ぶ朝廷の場で痛罵された成帝はたまったものではありません。激怒した成帝は、その場で死刑の宣告と、直ちに執行することを命じます。
 朱雲は引きずられながらも諫言を止めず、宮殿の「欄干」にしがみついてなおも止めようとしませんでした。とうとう「欄干」が「折れ」てしまいますが、その姿が見えなくなるまで朱雲は叫び続けたのです。

圧し折れた欄干を復元―自身の戒めに

 その様子に感動したある将軍が、助命を求めて必死に嘆願します。溜飲が下がった成帝は朱雲を許し、何とかこの一件は落着―しましたが、まだ後日談があります。
 破損した欄干を修理する際に、成帝は「取り替え」ではなく、木片を集めて「復元」を命じます。その意図は―
・為を思う諫言を聞き入れず、一時の怒りに任せて、大事にすべき臣下を死刑にしようとした自身への戒め
また、
・憚ることなく直言してくれる、そんな臣下への激励
上記のようなところにあったのです。

故事を踏まえた、「折檻」の意味とは

 この故事から、「折檻」は
・厳しく諫言、進言を行うこと。
・身を正しくするために躾けること。
という教訓に溢れる熟語となったのです。
 年齢を問わず、「折檻」とはするべき・されるべきものであることがお分かりになるかと思います。教育にせよビジネスにせよ、この故事を大いに活かしたいですね。

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専門家

都泰寛(講師)

株式会社因幡古典探究舎

漢学や古典を多様な視点からわかりやすく読み解き、ことわざや近現代の書籍、ビジネス書なども活用して講座や勉強会を開催。教養や読解力を身に付けるだけでなく、教育やビジネス、実生活に役立つ学びの場を提供。

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