人生最良の無形財産ってなんだろう?2
上・中・下の指導者像
これだけ聞きますと、「自分はどれに該当するだろう」と気になることかと思います。さっそく、何によって3通りに分かれるのか…見ていきましょう。
「力」を用いる
力を以て人を動かす。これが下のリーダーになります。力と言いましても、物理的なものではありません。所謂、「権力」や「立場」ですね。「権力をかさにきて」と世に言いますが、これに頼る者は信用されません。人を大事にしないからです。対抗する力がない故に、従っているだけ―信頼どころか、士気も高まりません。
この型にあたる例としては、織田信長や豊臣秀吉といった人物を挙げることができましょう。
「法」を用いる
法を以て人を動かす。これが中のリーダーになります。所謂、「法律」や「規則」ですね。こちらは力で押さえつけない代りに、法規で縛り、罰則を抑止力とします。国家の統治形態は「法治」を基本としますが、あまりに密な規則は逆効果です。歴史を見れば明らかでありましょう。
法に依る運営が厳格に過ぎたために失敗した例としては、始皇帝で有名な「秦」、人物としては商鞅(しょうおう・苛烈な法治を整備し、秦の強大化の基礎を築く)が挙げられましょう。自身が定めた法令のために亡命できず、車裂きの刑で悲惨な最期を迎えた商鞅の
法を爲すの弊、一にここに至るか
は今日名言となっています。
「心」を用いる
心を以て人を動かす。これが上のリーダーになります。智を磨き徳を修め、人格を修養した人物が可能とするのが、「心から服する」―「心服」であります。どうしてそうなるのか…興味を引くところでしょう。それを、高橋是清(国務大臣を歴任。日本のケインズと呼ばれる、財政の専門家)は次のように述べます。
勤勉とか、努力とか、忠実とか、忍耐とか、その他一切の美徳は、常識の圓満に發達した人には、必ず付随してゐる。怠けものや、不忠実な人、意志の弱い人などは、常識に缺けてゐるところがあるのは云ふまでもない。が、どんなに常識があつても、又、どんなに學才があつても、人格の低い、品性の卑しい人は駄目である。(高橋是清・遺著『随想録』126p)
一般に美徳と言われる素養は、身を修めた者であれば必ず付随している―そんなリーダーは、必ず人を大事にします。
その例を挙げるとキリがありませんが…
- 日比翁助(三越創始者)
- 出光佐三(出光興産創始者)
- 岩崎彌太郎(三菱創業者)
- 李世民(中国・唐の2代皇帝。『貞観政要』の主役)
- 武田信玄(戦国最強と言われた武将)
- 島津義弘(戦国武将・関ヶ原合戦の「島津の退き口」は有名)
- 徳川家康(江戸幕府265年の基礎を築く・『貞観政要』が座右の書)
わずかな事例でありますが、この辺にしておきましょう。それぞれの人物は、機会があれば詳細をコラムで発信したいと思います。
上の指導者であれ
上のリーダーに取り上げた人物たちは、上辺だけ取り繕って人を率いていたのではありません。人格の鍛錬は大いに努力を要することで、決して楽な道ではありません。しかしその気さえあれば、そこを進むことは可能です。
この道を進み続けたならば、「帝王学に嘘はなかった」と実感できる時が必ずきます。その到達点と、組織力を引き出せるリーダーを目指しましょう。



