市民公開講座デビュー 〜がんのこと〜
わたしは、けっこう顔が広いとよく言われます。
国道沿いのたこ焼き屋さんから政治家さんまで、
いろんな分野のお知り合いがいて、いろんなことを知れる環境にいられてありがたい限り。
<このコラムは、2015年ごろに私が綴っていたブログを再考・リライトしたものです>
さて、ある時
そんな色々なお知り合いの中で、スポーツのトレーニングを専門にしている方を飲み行った際に、突然こんなことを言われたんです。
「きょうは、ぜにちゃんに
お薬を作るプロセスについて教えて欲しいと思ってる」
いきなり何を言い出すのかと思いますよね。
トレーナーさんが、お薬つくるんですか?
ハテナがいっぱいながら、よくよく聞いて見ると…
新しい運動プログラムを作ろうと思って、とあるセミナーに行ったところ
その先生が「創薬のプロセスは参考になる」とおっしゃったとのこと。
それはつまり、
・自分がやろうとしていることについて徹底的に周辺情報をあつめて
・それを整理統合して
・自分がやるべきことを見出す
という、創薬研究のはじめの一歩のことなのかな?
我々が医学(とくに疫学)研究をするにあたって、基本中の基本として教えてもらう根本のひとつが
"critical appraisal"
日本語では、批判的吟味。
ここまで話して、友人がえらくうなづき出しました。
「そう、批判的吟味。先生も言ってた。
教育学には、医学のようなエビデンスに基づく検証が足りないって」
なるほど、そういうこと。
それだったらわたしにも説明できる範囲。
よかった…何聞かれてるのかと思ったけど安心して、説明開始。
「批判的」っていう日本語は、
なんかイヤな人みたいな感じがするけれども
"critical" という単語には、単なる批判という意味だけでなく
「決定的に重要なこと」
という意味もある。
"appraisal "は、あまり聞かない単語だけれど、「査定、値踏み」などの意味。
つまりcritical appraisal とは、
ある課題について、本当に重要なことはどこにあるのか、値踏みして見極める、
というような意味です。
具体的に、医学研究においては、
ある課題に関連する先行研究について
その論文の質と内容を吟味し、
論文の引用元もたどって、さらに内容を精査し、
現状わかっていることをできるだけ正確に把握すること。
さらに、同じような研究を網羅的に検索することで
現状の全体像を把握していきます。
たとえば、
わたしはパン屋も経営しているんですが
うちのパン屋には、他に売ってないようなパンしかないです。
パンなんて、コンビニでもチェーンのパン屋さんでも、スーパーでもコストコでも
どこでも売っています。
決してどこにもないパンって言うわけじゃないですが
「ここが違う」というポイントを、それぞれのパンに持たせています。
例えば…
牛乳もバターも卵も使わない、ふわふわ食パン。
旬のりんごを無水で炊き上げる、りんごが甘い時期しかつくらないアップルパイ。
ミニとんかつをカレーとパン生地で包んだ、フライ二重奏のカツカレーパン。
ありそうでないようなやつです。
もちろん、同じようなコンセプトの商品はありますが、
私達の信念として「医食同源」を大事にしているので
似てるパンがある」と言われれば食べに行ったり取り寄せたりして検証し、
少なくとも半径10km内には同じようなパンは存在しないことを確認して、現在の商品に至っています。
…とまあこんな感じで、あらゆるビジネスで現状を分析するのと同じように
教育プログラム開発でも、現状分析からはじめて
世間の流れと自分の立ち位置をはっきりさせることが大切。ということなんでしょうね。
ワイン飲みながらこんな話をしてるわたし、えらいですね笑
ひとつの物事を、思い込みで見誤ることなく
多角的に情報を集めることで正確に理解し、
正しい認識にもとづいて、次の行動を決める。
どんなときでも、critical appraisal を意識してみると
なんと日常というのは思い込みの多いことか…と気付かされます。
テレビ番組も新聞もWEBも書籍も
ひとつの情報をみて「そうか!」と納得するのではなく
「ほんとかな?なんでかな?」
とツッコミを入れてみる。
別のメディア、別の人、違った視点で情報を捉え直してみる。
情報源はなにか、気にしてみる。
それだけでたいぶ違います。
まあ、わたしなんて普段テレビは見ないし、新聞もネットもほとんど信用してないので、めんどくさいだけの人間に見えるかもしれませんが…
それでもこのまま生きていきますよ。
だって、納得できないものは納得できないもん!