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分かりやすく伝える「情報のデザイン」でビジネスや医療分野に変化をもたらす

情報をデザインし商売と医療に役立てる事業支援アドバイザー

錢谷聖子

錢谷聖子 ぜにたにさとこ
錢谷聖子 ぜにたにさとこ

#chapter1

データ解析をもとに課題を洗い出し、店舗や企業の成長につなげる

 看護師らが見守る子育てカフェなどを展開してきた「うちナース」。理事長の錢谷聖子さんは、バイオ系スタートアップを支援するベンチャーを皮切りに、国立がん研究センター、製薬会社など、医療業界でキャリアを歩み、創業しました。

 事業を営む中で強みとなったのが、〝情報をデザインする力〟です。
 「幼少期から大学教授の両親に、難しいことを分かりやすく〝翻訳〟する重要性を刷り込まれ、大学院では、シンプルを極めて研究成果をプレゼンする術を鍛えられました。情報を整理し、順を追って伝える力は、いろいろな場面で役に立ちます」

 錢谷さんは、経験とあわせて、起業で身につけたマーケティング知識をもとに、ビジネス支援に乗り出します。経営学の研究者、小阪裕司氏が主宰し、約1500社が参加する勉強会「ワクワク系マーケティング実践会」では、受賞歴(2019年)も。そこでつながった企業や店舗から個人的に依頼されることが増えているとか。

 「POSレジの売上管理や顧客情報など、大事なデータが眠っていないでしょうか。データを解析して、課題を抽出し、お客さまへの伝え方を見直したり、新たな事業を企画したり。個人商店から大手企業まで、売り上げアップのお手伝いをします」

 一見、これまでとかけ離れた事業に見えますが、錢谷さんはこう答えます。
 「医療サービスは、患者さんの話を聞き、悩みに応える究極の接客業です。特に医療従事者と患者さんの知識の差は大きいので、伝え方には心を配ってきました。お客さまのニーズをつかみ、満足してもらうという基本は医療もビジネスも同じです」

#chapter2

医療分野でのキャリアをもとに、企業向けコンサルやがんに関する市民セミナーを実施

 錢谷さんが、「がん」を軸に取り組んだ仕事も多岐にわたります。
 「2000年前後に遺伝子解析の技術が飛躍的に進歩し、がんをはじめ、今まで治療が難しいとされていた病気の治療について関心が集まりました。ちょうど自分の研究キャリアを決める時期でしたので、最先端の研究に携わりたいと思いました。同じ頃、母にがんが見つかり、患者の家族としてもがんという病気に目が向き、治療の難しさを実感したことも大きかったですね」

 大学院で抗がん剤の研究に打ち込みつつ、新薬実用化までの長い道のりに、「薬だけで人は幸せになるのか」と自問することもあったとか。
 「出産を機に、東京大学大学院に新設された公衆衛生大学院で学ぶことに。予防に重点を置くヘルスコミュニケーション領域に期待しました」

 その後、国立がん研究センターでは一般向けのがん情報サイトを構築。製薬会社では、がん領域のMR(医療情報担当者)に向けた研修を担当。経験を生かし、医療と企業、市民をつなぐ活動にも力を入れています。

 企業向けには、医療情報の監修や医療機関との橋渡しなど、コンサルティングを提供。創薬バイオベンチャーをはじめ、医療アプリを手掛けるIT系やセクシャルヘルスケアなど、幅広い企業ニーズに応えます。

 また公共施設などで、がんをテーマにした市民講演に登壇することも。
 「がんについて正しい情報が届いていないと感じる場面は多いです。医療現場では『ネットでこの薬が効くと見た』など、誤った思い込みを正すことに苦労しています。病院に行くほどでなくても、保健室の先生に尋ねるように、疑問を解消できる場にしたいですね」

錢谷聖子 ぜにたにさとこ

#chapter3

伝える力をベースに、コミュニケーション研修やコミュニティーづくりも

 多方面で活躍する錢谷さんですが、「私自身はいろいろやっているつもりはないんです」といたって軽やか。
 「どの活動もベースにあるのは、〝情報を整理して分かりやすく伝えること〟。ビジネスのお手伝いやがんのセミナーなど、アウトプットの形が異なるだけです。ほかにプレゼンテーション研修やコミュニケーション研修など、社員や個人向けの研修でもお役に立てます」

 中でも今につながる経験と語るのは、27歳の頃にNPO職員として携わった国のプロジェクトです。
 「当時、社会問題になった救急搬送のたらい回しを契機に、奈良県でICT(情報通信技術)を活用した救急医療管制支援システムの改革を担当しました。救急車は総務省管轄、病院は厚生労働省、でも県立病院は県庁管轄と、それぞれに違った観点で救急医療に携わるステークホルダーに同じ方向を向いてもらうため、異業種を集めた約100人を前に研修を行いチームビルディングに努めました」

 「うちナース」では、子育てカフェ「ごろねのくに」の営業に区切りをつけ、新たなコミュニティースペースを計画しています。
 「何でもネット検索できるようになった反面、あふれる情報に惑わされる人が多いと感じます。地域の人が気軽に立ち寄り、子育てに限らずいろいろな悩みを話せる場をつくり、無用な心配をする人を減らしたいですね」と錢谷さん。自身に蓄えてきたさまざまな〝財産〟を社会に役立てるべく、柔軟な発想力でチャレンジを続けます。

(取材年月:2023年7月)

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専門家プロフィール

錢谷聖子

情報をデザインし商売と医療に役立てる事業支援アドバイザー

錢谷聖子プロ

事業支援アドバイザー

一般社団法人うちナース

医療機関勤務や起業経験を生かし、難しいことをわかりやすく伝える〝情報のデザイン力〟で小規模な商店から上場企業まで幅広くお手伝い。コンテンツマーケティング支援、医療に関する市民講演など多方面で活動。

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