【専門医解説】感染者が多くなり、誤情報も多い「梅毒」の正しい知識
女性はデリケートゾーンに、かゆみやおりものの増加などで悩まれる
ことが多いのではないでしょうか?
その度に、性病ではないか?と思われる方もいると思います。
デリケートゾーンの症状は性病を疑え!という世間的なイメージも強いと思います。このような検査意識を持つ姿勢は正しく、大切なことです。
しかし、実は性病の多くは無症状です。
陰部に違和感があるときは多くの場合、カンジダ膣炎や細菌性膣症という、自己発症する疾患が原因です!
この記事は、世界で最も信頼性のあるメタアナリシス(様々な研究・文献を統合して判断すること)エビデンスの1つであるUpToDate(https://www.uptodate.com)をエビデンスとして記載しております。
デリケートゾーンの症状の原因
女性ならではの苦しみとして、デリケートゾーンの症状は様々にあると思います。
おりものが増えたり、においが気になったり、かゆかったり、痛くなったりする悩みを相談される方は少なくありません。
この原因として、はじめに性病を連想される方も多いと思います。実際に、淋菌やクラミジアを代表とする性病が原因で、この症状が起こることもあります。
しかし、性病は6~8割が無症状とされています
。
デリケートゾーンに症状を起こす原因が性病であることは稀
であり、実際はもともと身体にいる菌が過剰に増えたことで発症する「カンジダ膣炎」や「細菌性膣症」が原因であることが圧倒的に多いです
(1)。
症状の原因:カンジダ膣炎
カンジダ膣炎とは、カンジダというカビによって引き起こされる炎症です。
カンジダは空気中にごく普通に漂っており、環境中のいたるところに存在しています。当然、体中に存在しています。
デリケートゾーンにも存在しており、疲労などによって増加し、炎症を引き起こすことがあります。
これにより、陰部のかゆみや痛みが引き起こされます。
治療を希望される場合は、膣剤やクリーム、飲み薬を処方します。
しかし、検査を受けてカンジダが陽性だったとしても、症状がなければ治療は不要です。
注意しなくてはならない点として、カンジダを検査で正しく判定するのは難しいことがあげられます。
陽性であっても治療が必要ない場合があることを述べました。その逆で、検査結果が陰性でもカンジダ膣炎を否定できません。
陰部のかゆみや痛みが強い場合は、カンジダの陰性・陽性に関わらず、診断的に治療することが多くあります。
症状の原因:細菌性膣症
細菌性膣症とは、陰部にいる嫌気性菌と呼ばれる菌が増加し、おりものが増加したり、におったりするようになる疾患です。この嫌気性菌も女性なら誰しも持っていて、疲労などによって増加することで発症します。
自然に治ることも多いため、多くの女性が「勝手に発症しては治る」ことを繰り返しています。
ただ、それに気づかないことも多いです。
カンジダ同様、検査結果が陽性でも、症状がなければ治療不要です。治療には膣剤、飲み薬があります。
カンジダと細菌性膣症の2疾患がデリケートゾーンの症状の原因としては圧倒的ですが、これ以外にも、年齢と共に乾燥してくることにより、かゆみなどを引き起こす「萎縮性膣炎」や、衣服などによってかぶれる「接触性皮膚炎」もあります。
このように、デリケートゾーンの違和感の原因は、性病以外にも存在する上、判断も難しいものです。
もし、違和感を覚えた際は、性病以外の可能性があることを思い出し、医師へ相談いただければと思います。
症例
デリケートゾーンの症状に対する正しいマネジメントは、まだ日本では不十分です。
私はこの領域において研究をしており、適切なマネジメントを目指して、デリケートゾーン不調の専門外来も行っています。
その中で、よく遭遇する一例を挙げます。
20代女性がデリケートゾーンのかゆみを自覚し、近くの病院で性病検査やカンジダの検査を行いました。
しかし、すべて陰性であった上で症状はおさまらず、当院へ来院されました。
検査結果は陰性でありましたが、問診内容や有病率等からカンジダ膣炎と考え、膣錠とクリームで治療開始。症状は改善されました。
同じ悩みを抱えて来院される方は多く、似たような事例は珍しくありません。
このように、デリケートゾーンの症状は性病ではなく、カンジダ膣炎や細菌性膣症といった自己発症する疾患の場合があること、それに応じた治療方法があることは、たくさんの方に知ってほしいと思います。
逆に、性病は無症状が多いため、症状がなくても感染が考えられます。
そのため、性病は症状が出てから検査するのではなく、不安機会がある方は定期的な検査が重要です。
予防方法
デリケートゾーンに対するマネジメントは欧米では比較的進んでおり、正しいエビデンスに基づいた予防も行われています。それは、治療薬として使用する薬剤を定期的に使用する方法です。
この予防方法は国内ではあまり施行されていませんが、当院では実施しています。
新宿サテライトクリニックでのみ実施しております
ご予約の必要もございませんので、デリケートゾーン不調に悩まれている方はお気軽にご相談ください。
1) Sobel JD. Vulvovaginitis in healthy women. Compr Ther 1999; 25:335.