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【専門医解説】クラミジア無症状率は8割超え!性感染症は無症状が多いため注意

北岡一樹

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テーマ:性感染症


性感染症の症状と聞くと、性器の異常や、梅毒のバラのような発疹を想像される方は少なくないと思います。
しかし、実は性感染症は無症状が多いのです。

例えば、性器クラミジアの無症状率は8割です!

クラミジアにかかったとしても、症状が出るのは2割に過ぎません!
他の性感染症においても無症状率は軒並み高くなっています。

本記事では、無症状の割合や対策について、解説していきます。

*この記事は、世界で最も信頼性のあるメタアナリシス(様々な研究・文献を統合して判断すること)エビデンスの1つであるUpToDateをエビデンスとして記載しております。

クラミジアの無症状率は8割!


性感染症のうち、日本で多いのは性器クラミジアです。

性器クラミジアは性行為によって感染し、排尿時の違和感や膣の違和感を引き起こします。
そして、無症状率に関しては、以下のように報告されています。

性器クラミジア感染率における多国籍研究において、性感染症スクリーニング検査で陽性だった人のうち6~14%にしか症状が認められませんでした(1)。
以上は女性における無症状率ですが、男性においても、無症状率は40~96%と報告されています (1,2,3)。
大体8割程度が無症状ということとなります。

実は私も2回クラミジアに感染したことがあります。
実際、1回目は排尿時違和感で気づきましたが、2回目は全くの無症状でした。

また、恥ずかしながら、医師になっても、クラミジアの無症状率がこんなに高いことを知りませんでした。UpToDate等の信頼のあるエビデンスを参照して知るようになり、実際に患者さんと接する中で実感しました。

無症状であることの影響


無症状であることの一番良くない点は、不妊へ繋がってしまうことです。

特に女性においては、クラミジアは10~15%の確率でPIDと呼ばれる骨盤内炎症性疾患へ進展し、不妊のリスクとなってしまいます。
そして、また、PIDとなってしまった場合、治療開始が遅れると、治療したとしても不妊を防ぐことは出来ません。クラミジアに感染した女性において、治療が3日以上遅れた場合、17.8%のケースで不妊となったと報告されています(4)。
したがって、無症状であることにより感染に気が付かず、発見・治療が遅れ、不妊へと繋がってしまします。

他の性感染症においても無症状が多い!

他の性感染症においても、無症状率は押しなべて高いです。

淋菌の無症状率
60~70%(5, 6)

トリコモナスの無症状率
66~85%(7, 8)

梅毒の無症状率
統計的には不明です。梅毒の最初の症状は、痛みのないデキモノ(下疳)であり、治療しなくても数週間で消失するため、気づかれないことも多いです。

HIVの無症状率
HIVに感染した場合、初期症状として風邪のような症状が出ます。
風邪と勘違いしやすい上、この症状が出るのは29%と報告されていて、71%は無症状となります(9)。
一方、その後、エイズへと進展すると、必ず症状が出る(感染症にかかりやすくなる)こととなります。

無症状が多いという事は、つまり、「気づけない」という事です。

性感染症に気が付けない!どうすればいい?


対策としては、まず予防があります。

「コンドーム着用」がメインとなりますが、感染を予防するためには、確実な使用が必要となります。

正しい使用方法としては、挿入行為がなく少しの性器接触の時点でも装着する、陰茎の下まで確実に装着する、コンドームを着脱する時に分泌物が陰茎に触れないようにする等です。
実際にこれらが遵守されることは難しく、そのため、コンドームによる予防効果は82%となっています(10)。

もう一つは定期的な性感染症検査です。コンドームの予防効果は確実ではなく、また、コンドームの着用率は54%しかない(11)ということを踏まえると、定期的に性感染症の検査をする必要があります。

まとめ


性感染症は基本、症状が出ると思っていませんでしたか?私もそう思っていました。

無症状の方が多いことを覚えてください。

また、コンドームも確実な効果ではないため、早期発見・不妊を防ぐためには、定期的な検査が重要となります。

出典

1) Detels R, Green AM, Klausner JD, et al. The incidence and correlates of symptomatic and asymptomatic Chlamydia trachomatis and Neisseria gonorrhoeae infections in selected populations in five countries. Sex Transm Dis 2011; 38:503.
2) Kent CK, Chaw JK, Wong W, et al. Prevalence of rectal, urethral, and pharyngeal chlamydia and gonorrhea detected in 2 clinical settings among men who have sex with men: San Francisco, California, 2003. Clin Infect Dis 2005; 41:67.
3) Cecil JA, Howell MR, Tawes JJ, et al. Features of Chlamydia trachomatis and Neisseria gonorrhoeae infection in male Army recruits. J Infect Dis 2001; 184:1216.
4) Hillis SD, Joesoef R, Marchbanks PA, et al. Delayed care of pelvic inflammatory disease as a risk factor for impaired fertility. Am J Obstet Gynecol 1993; 168:1503.
5) McCormack WM, Stumacher RJ, Johnson K, Donner A. Clinical spectrum of gonococcal infection in women. Lancet 1977; 1:1182.
6) Klouman E, Masenga EJ, Sam NE, Klepp KI. Asymptomatic gonorrhoea and chlamydial infection in a population-based and work-site based sample of men in Kilimanjaro, Tanzania. Int J STD AIDS 2000; 11:666.
7) Workowski KA, Bachmann LH, Chan PA, et al. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep 2021; 70:1.
8) Sena AC, Miller WC, Hobbs MM, et al. Trichomonas vaginalis infection in male sexual partners: Implications for diagnosis, treatment, and prevention. Clin Infect Dis 2007; 44:13.
9) Robb ML, Eller LA, Kibuuka H, et al. Prospective Study of Acute HIV-1 Infection in Adults in East Africa and Thailand. N Engl J Med 2016; 374:2120.
10) Crosby RA, DiClemente RJ, Wingood GM, et al. Value of consistent condom use: a study of sexually transmitted disease prevention among African American adolescent females. Am J Public Health 2003; 93:901.
11) Kann L, McManus T, Harris WA, et al. Youth Risk Behavior Surveillance - United States, 2017. MMWR Surveill Summ 2018; 67:1.

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北岡一樹
専門家

北岡一樹(医師)

医療法人社団予防会新宿サテライトクリニック

大学研究員として日々進化する細菌学の研究・分析に参画、並行して性感染症診療クリニックで日々の臨床に携わり、研究と治療の両面から予防医療の進化に貢献。新たな予防法の研究・開発・実用化にも取り組む。

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