【止まらぬ円安】6年半ぶり125円台!日銀が発表した「連続指値オペ」と今後の方向感は?
みなさんこんにちは。WealthLeadの薄井です。
今回は株価と金利の関係についてお話していきます。
<金利とは>
始めに、金利について振り返っておきましょう。
金利を表す言葉としてよく聞くのが「経済の体温」という言葉があります。なぜ金利が体温なのでしょうか。
例えば、景気がよくなるときは、消費者の購買意欲が増します。景気とともに個人消費が増えれば、企業はものを多く生産しますし、そのためには人を雇ったり、新しく工場を作ったりなどの設備投資も増加します。
そして企業がお金を必要としていることが分かれば銀行も金利を上げるようになります。設備投資などでお金が必要な企業は金利が高くてもお金を借りますので、一般的に資金需要が高まることで、金利が上がると考えられています。
一方で、個人消費が減退すれば、企業は生産活動を停止するようになります。そうなると設備投資をする必要はなくなりますので、資金需要は低下し、金利は下がると考えられています。
そして、金利がまさに体温計と言われる所以なのですが、僕らの体温も同じで、適度な運動(先ほどの例で言う個人消費等)をして体を温めるくらいなら健康にもいいですが、激しい運動を何時間も続けることは体への影響はマイナスですよね。体を壊してしまっては仕事や、学校にも支障をきたします。
金利も同じです。景気が良くなることはもちろん良いことですが、活発になりすぎてインフレが深刻になることもありますし、バブルのようになってしまい、普通の経済活動ができなくなる恐れがあります。
逆に体温が低すぎても体には良くないですよね。体温は高すぎても、低すぎても体には良くありません。
ここで重要な役割を果たすのが金融政策です。
金融政策とは各国の中央銀行(日本は日銀、アメリカはFRB)が自国の景気をどのようにしていくかを考える際に、エアコンで温度を上げ下げするかのように、金利を上げ下げして景気を調整しようとすることです。市場が過熱状態になってきているときには、金利を高くすることで、みんなの興奮状態を抑えることができます。
例えば、自動車ブームが来たとします。ローンを組んでみんなが車を欲しいと思っていて、ある種、自動車バブルみたいになってしまいました。行き過ぎたブームはインフレを加速させて景気に対して悪影響を与えかねません。ここで中央銀行は「じゃあ金利を5%に上げます」とします。中央銀行がこのように金利を操作すると自動車ローンの金利もつられて5%以上になるので、「5%のローンはさすがに高いなぁ、車買うのやめようかな」と冷静になる人が出てきます。このような方法で自動車バブルをコントロールします。このことを金融引き締めといいます。
ところが次は、金利を5%に上げたことで、みんなの購買意欲が落ち着きすぎてしまいました。「もう自動車買えない。俺は家でひきこもるわ」となったら消費が大きく落ち込み景気が後退しかねません。そうなるとまずいので、「ごめんごめんちょっと金利下げるから、家にこもらないで、もっと車を買ってくれない?」と利下げを行い、個人消費を刺激します。そしてこのことを金融緩和といいます。
このように金融引き締めは過剰な運動を抑制する働きをし、金融緩和は上がりすぎた体温を下げることを言います。
これが金融政策の中のひとつの金利政策というものです。
そして金利には2種類あります。短期金利と長期金利というものです。この2種類の金利のバランスを見ることがとても重要です。
短期金利は1年未満の金利、長期金利は10年以上の金利を指します。
仮に短期が2%、10年が5%だとすると、期間の長い10年のほうが金利が高いので、一般的に経済成長が続き、物価が継続的に上がっていくというポジティブな予想がされます。でも、今、景気が過熱して短期は5%だけど、10年の金利が2%だったらどうでしょうか。 景気が過熱しているから短期金利は高いけれど10年後はきっと今より悪くなっているんだな、と思っているから景気は悪化していくのだなと読み解くことができます。
そしてこの短期と長期の金利を結んだ線を、イールドカーブと言います。この形がどうなっているかによって景気の具合が分かると言われており、通常は長期の方が金利が高くなる、右肩上がりの形状となります。
このように短期金利と長期金利のバランスを見ることで、現在と比較した将来の景気を占うことができ、経済の将来の見通しがわかるということになります。これが金利の大まかな仕組みです。
<株価と金利の関係>
そして本題の金利と株価の関係に迫っていきましょう。
金利が上がると株価は下がるのでしょうか。それとも上がるのでしょうか。教科書的に答えると株価は下がります。
先にも説明したように金利を上げるということは景気を冷やす行為です。なので、金利が上がると個人消費も落ち込みますし、それによって企業活動も低下。株安が引き起こされます。
加えて、理論株価という考え方もあります。理論株価とは、以下のような式で表されます。①
理論株価=利益÷(割引率-成長率)…①
=利益÷(金利+リスクプレミアム-成長率)…②
この式は現時点の株式の評価をする際に、将来の利益や配当を現在価値に割り引いて計算するもので、分母にある割引率は②のように分解されます。
式を見て分かるように金利が上がれば、その分分母も増えるので、理論株価は下がります。
この式に従えば、成長率の高いグロース株ほど相対的に金利上昇時のやられが大きいということになりますね。直近では2022年のアメリカ市場も金利上昇に伴い、数々のテック企業が相次いで下落しています。
ただし、一方で先ほども述べたように金利が上がるということは逆説的に景気が良いということにもなります。そのため企業業績も伸び、株価が上がるということもあります。過去にも金利上昇下にもかかわらず力強い景気によって株高が継続した例はいくつもあります。
教科書的にも、例外でも起こりうる事象は様々あり、実際にじゃあどっちなんだと言われると、これは局面によって変わるというのが現状出せる答えです。金利が上がったから株安が来るぞと短絡的に結びつけるのではなく、その時点の状況、市場が過熱気味なのか、落ち込み気味なのか、そもそもなぜ金利が上がったのかをしっかりと見極めて判断することが大切です。
<市場の4つのサイクル>
昔から市場は4つのサイクルで動いていると言われています。
まずは1つ目、金融相場。景気が悪い時に中央銀行が金融緩和を行うことで、株価が上昇し始めるのが金融相場です。コロナ渦はまさに金融相場でしたね。低金利になり、世の中にお金が出回ることで、企業は借入れをしやすく、また利払い負担が軽くなることで設備投資を積極的に行いやすくなります。そのため、企業業績回復を期待して株価が上昇しやすくなります。将来の好景気への期待感で株が買われることも多くあるため、不景気でも株高、という場合もあります。
次に来るのが、業績相場です。世の中にお金が出回まわったことで設備投資がなされ、企業の業績が良くなるのが業績相場です。これまで金融緩和による景気回復期待で上昇していた相場に、企業の業績が伴うことで景気が回復する実体経済が評価されます。
そして、逆金融相場がやってきます。景気が良くなると、中央銀行は加熱しないように体温調節をします。金融引き締めですね。それに転じるのが逆金融相場です。
インフレ傾向を抑えるために、金利を引き上げることで世の中に出回るお金の量を縮小させます。逆金融相場では、株価は調整局面となり下落に転じる場合が多くなります。
最後が、逆業績相場。金融引き締めにより景気や企業業績の先行きが悪化することで株価が下落するのが逆業績相場です。調整相場だと考えられていたこれまでと違い、企業業績が悪化することで本格的な下落トレンド入りすることが考えられています。
相場は金融から始まり、後から業績が伴ってくることがほとんどです。そうなると、金融政策を行う中央銀行の動きを見ることが非常に重要と言えます。
もちろん今の相場がどれに当てはまるのか答え合わせをするのは後になってみないと分かりません。ああ、あの時はこの相場だったなあと思い返して分かることがほとんどです。それでも大まかに市場のサイクルを知っておくだけでも、市場への理解が一層深まるのではないでしょうか。
<まとめ>
今回のまとめです。
- 金利は経済の体温
- 金利が上がったからといって株価が下がるとは限らない
- 市場は4つのサイクルで成り立っている
今回お話した株価と金利の話は、ほんの一面にしかすぎません。物価や、為替相場など様々な需給バランスの上で金利は成り立っています。株価についても同様です。
投資をするにあたって切っても切り離せない株価と金利の関係を抑えて、賢く資産形成していきましょう。
このコラムはYouTubeでも解説しています。ぜひご覧ください。