医療と生活者をつなぐ医療機器開発の専門家
三井桂子
Mybestpro Interview
医療と生活者をつなぐ医療機器開発の専門家
三井桂子
#chapter1
「以前よりトイレの回数が増えた」「尿漏れが気になる」「なんとなく違和感がある」。出産や加齢などに伴い、骨盤底の筋肉や組織が弱くなることで、女性の体にはさまざまな悩みが生じることがあります。なかでも、子宮や膀胱などが下がる「骨盤臓器脱」は、不快感に加え、「恥ずかしくて相談できない」と一人で抱え込んでしまうことも。こうした声に耳を傾け、20年以上にわたり医療機器の開発に取り組んでいるのが、「三井メディカルジャパン」代表の三井桂子さんです。
「『フェミクッション』は、下着として着用し、骨盤底を下から優しく支える医療機器です。開発当初は疾患に関する情報が今ほど多くなく、実際に悩みを抱える数十人に協力していただき、試作品を手作りしました」
医師の監修のもと、シリコン素材を含む三層構造の支持具と専用のサポート下着を開発し、日本製にこだわって製品化。デザインや着用感、扱いやすさを確かめながら改良を重ね、国内で累計13万人以上が使用し、海外にも展開しています。
2018年には、泌尿器科医師で医療法人社団マイクロ会の理事長を務める永尾光一さんとともに「銀座リプロ外科」を開院。医療現場で得られる知見や声を製品開発に生かしています。
このほか、尿漏れや骨盤底ケアに着目した「フェミクッション ハピネス」、リンパ浮腫のケアに用いる医療用弾性ストッキング「リンパスリム」なども開発。女性の体や生活の中で「あったらいいな」というものを、製品という形にして届けています。
#chapter2
国内外で事業を営む家に生まれ、家業とは異なる道を歩んだ三井さん。海外で3人の子どもを育てる中、現代医療によって三男が命の危機を脱した経験から、医療への敬意と「何か恩返しがしたい」という思いを抱くようになりました。医療ボランティアなどの活動を通じ、自身も経験した産後の体の変化や女性特有の悩みに関心を深めていきます。
「昔から、おせっかい焼きなんです。近くで困っている人を見かけると、見て見ぬふりができなくて」
骨盤臓器脱の第一人者だった医師との出会いをきっかけに、この分野を学び、得た情報を身近で悩みを抱える女性たちと共有。一方で、治療や医療機器の選択肢が限られ、情報も少ないことに目を向けるようになりました。
「私は医師ではありませんが、当事者の目線で、毎日使える医療機器のアイデアはどんどん膨らんでいったのです」
「それなら自分で作ってみよう」と、帰国後の2006年に医療機器開発事業をスタート。多くの女性の声に背中を押されるように、製品開発に取り組みました。
医療者や企業が十分に目を向けていない悩みを、患者や当事者の視点で取り上げ、伝えることも大切にしています。その活動は製品開発にとどまらず、骨盤臓器脱やリンパ浮腫、排尿トラブル、骨盤底ケアなどをテーマにした動画配信を通じて、情報発信にも力を注いでいます。
#chapter3
三井さんは、女性の骨盤底領域やリンパ浮腫だけでなく、男性不妊についての啓発活動にも取り組んでいます。男性不妊の原因の一つとされる精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)の治療に取り組む永尾医師とともに、一般社団法人日本精索静脈瘤協会を設立。各地で開くセミナーや勉強会には、三井さんも必ず同行します。
「一般の人には耳なじみのない病気や医療の話を、分かりやすく伝えるための『ツッコミ役』のような存在かもしれませんね」
同協会には異分野で活躍する動画配信者も理事として参加し、医療の枠を超えた顔ぶれがそろいます。
三井さん自身も「フェミクッションチャンネル」で、製品の使い方や骨盤臓器脱でもスポーツをする方法など、日常生活に役立つ情報を紹介。「けいこの本音カラダケアLab【女性の病気ケア・予防】」では、リンパ浮腫のセルフチェックやセルフケア、女性の体に関するデリケートなテーマを、優しく柔らかな語り口で伝えています。
専門的な医療情報に触れるきっかけをつくるとともに、クリニックの医師や看護師、患者から寄せられる声を製品開発につなげています。
「医療機器の開発には、当事者である女性の目線が欠かせません。医師による効果検証などを重ねながら、『日常的に使えて、気持ちが上がるかどうか』まで大切にしたい。前向きな生き方を諦めないための『おせっかい』を、これからも続けていきたいですね」
(取材年月:2026年9月)
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Profile
医療と生活者をつなぐ医療機器開発の専門家
三井桂子プロ
リンパ浮腫アドバイザー・医療プロデューサー
株式会社三井メディカルジャパン
医療者や患者の声を反映し、骨盤臓器脱など女性特有の悩みに寄り添う医療機器を開発。医療現場の知見と当事者の視点を生かした製品づくりや情報発信を通じて、前向きな暮らしを支えます。
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