家づくりで迷う人へ。まずは「自分を設計する」ことから始めよう

藤木賀子

藤木賀子

テーマ:注文住宅




― 失敗しない家づくりの第一歩は、間取りではなく“考え方” ―

はじめに

:家づくりの「迷い」は、最初の一歩にある
家を建てようと思った瞬間、
ほとんどの人が最初にやることは、情報収集です。

ネットで検索し、展示場を回り、
パンフレットを請求して、施工事例を見比べる。

でも、そこに落とし穴があります。

どれだけ調べても、「これだ」という答えにたどり着かない。
気づけば3か月、半年……情報だけが増えて、頭の中は迷路のよう。

その理由はとてもシンプルなんです。

家づくりの“スタート地点”を間違えているから。

第1章:なんとなく始めた家づくりが、迷路の始まり


展示場に行くと、どの会社も丁寧に説明してくれます。
「高気密・高断熱」「安心の保証」「デザイン性抜群」
パンフレットにはどれも魅力的な言葉が並んでいます。

でも、3社、5社、10社と回るうちに、
だんだん頭の中がこんがらがってくるんですよね。

「どこも良さそうだけど、何が違うの?」
「営業さんの印象はいいけど、決め手がない」



気がつけば、
「いい会社が多すぎて選べない」という迷路に入っています。

“いい会社”と“合う会社”は違う
家づくりで本当に大事なのは、
いい会社を探すこと」ではなく、「自分に合う会社を見つけること」です。


でも多くの人は、“合う”を考える前に、“いい”を探してしまう。

その結果、こうなります。

広告や担当者の印象で判断してしまう

契約してから「思っていたのと違う」と感じる

打ち合わせの途中で、考えがブレる

広告に出てくる“理想の家”の罠
「高性能でデザインも良く、価格も手頃!」
そんなキャッチコピーを見たら、心が動きますよね。

「これが私の理想の家かもしれない」
そう感じて、資料請求をする。

でもそれは、あなたが“求めていた理想”ではなく、 “誰かが見せたい理想”なんです。

たとえばAさんのケース
Aさんは「高気密・高断熱の家がほしい」と思っていました。
性能にもこだわりたいけれど、デザインも大事。
できれば予算も抑えたい。

そんなときに出会ったのが、
「高性能 × デザイン × 手の届く価格」をうたう会社。
広告の写真も美しく、コンセプトも共感できる。

資料請求をして、担当者と打ち合わせを重ねました。
説明は丁寧で、印象も悪くない。

「ここなら」と思い始めたころ、
少しずつ、違和感が出てきます。

「この会社のデザインセンス、なんか自分と違うかも」
「性能の話をしても、深い説明が返ってこない」
「担当者ごとに言っていることが違う」

Aさんが違和感を抱いたのは、会社が悪いからではありません。
Aさんの中で、まだ“自分の基準”が曖昧だったからです。

“いい会社”と“合う会社”の決定的な違い
“いい会社”とは、誰にとっても整って見える会社。
“合う会社”とは、あなたの価値観とリズムが合う会社。

つまり、

評判がいい ≠ 相性がいい


この違いを理解できるかどうかが、
家づくりの分かれ道です。

第2章:会社にも、人にも“癖”がある


どんな会社にも「癖」があります。
営業の進め方、社内ルール、打ち合わせのテンポ、担当のタイプ。

これを理解せずに進むと、
後で「こんなはずじゃなかった」と感じることになります。

タイプ①:ルール重視・効率型


営業色が強く、社内ルールがきっちりしているタイプ。
打ち合わせ回数やスケジュールも決まっていて、
営業・設計・工事が分業制。担当が途中で変わることもあります。

向いている人


スムーズに進めたい

決まった中から選ぶのが楽

時間とコストを守ることを最優先したい

気をつけたいこと


細かい要望には対応しづらい

“担当者の相性”が結果を左右する

商品が好きでも人が合わなければ、担当変更をお願いする勇気を

タイプ②:フルオーダー・自由設計型


「なんでもできます」と言う会社。
柔軟で対応力がある反面、
自由すぎて迷いやすく、予算が上がりがちです。

向いている人


家づくりに深く関わりたい

細かく決めたいタイプ

多少のコストや時間の増加も受け入れられる

気をつけたいこと


自分の中に“基準”がないと、永遠に決められない

自由設計は自由ではなく“判断の連続”

わからないことは、自分の代わりに整理してくれる人を立てること

タイプ③:設計主導・お任せ型


営業担当がいない、または設計士が直接対応する会社。
デザインやコンセプトを重視し、
性能・素材・空間をトータルで提案します。

向いている人


“任せる”ことが得意

デザインや世界観を信頼できる相手に託したい

自分の感覚を共有できる

気をつけたいこと

“任せる”ことと“丸投げ”は違う

細部より“暮らし方”や“空気感”を共有すること

予算内に収めるには、最初に優先順位をはっきり伝えること

家づくりは「どんな会社と出会うか」ではなく、
「どんな人と一緒に考えるか」で決まります。

第3章:まずは「自分を設計する」ことから始めよう


家づくりでいちばん最初にやるべきこと。
それは「どんな家を建てるか」を考えることではありません。

自分を設計すること。

どんな暮らしを望んでいて、
何を大事にしたくて、
どんな人と、どんな時間を過ごしたいのか。

この“自分の軸”がないまま家づくりを始めると、
どんなに情報を集めても、ずっと迷い続けることになります。

5W2Hで「自分」を設計する
自分を設計するには、ビジネスでも使われるフレームが役立ちます。
それが 5W2H(Who・Why・What・Where・How・How much・When)。
難しく考えず、家族で話し合うだけでも大きな整理になります。

Who:誰が決める?
Who:誰が決める?
家づくりは、家族全員のプロジェクトです。
でも、決定権者が曖昧なまま進むと必ず混乱します。

資金を出す人・住む人・意見を出す人。
それぞれが違うと、打ち合わせのたびに「どっちが正しい?」となります。

まずは決めましょう。
この家の最終判断を下すのは誰か?

そして同じように、会社側でも「誰と話すのか」を明確に。
営業・設計・現場、いろんな人が出てくるからこそ、
“自分の担当”をはっきりさせておくと安心です。

Why:なぜ家を建てるのか

「今の家が手狭だから」
「子どもが大きくなったから」
どれも間違いではありません。

でも、それだけでは本当の動機になりません。

広さを求めているのか

居心地を変えたいのか

家族の関係を整えたいのか

将来の安心を買いたいのか

“なぜ”を深掘りすると、
あなたの「本当の優先順位」が見えてきます。

What:何を大事にするのか

理由が見えたら、次は優先順位を決めます。

デザイン

性能

コスト

場所

どれも大事。でも全部は取れません。

譲れないものと、譲ってもいいもの。
それを家族で共有しておくだけで、
決断が早く、ストレスも減ります。

Where:どこに建てるか

土地を探すなら、「場所」より「条件」で考えましょう。

「駅近がいい」ではなく「共働きで通勤が大変だから駅近」
「学区を優先」ではなく「子どもの通学の安心を重視」

“理由のある条件”を整理すれば、
土地選びの迷いが一気に減ります。

How much:どれくらい使うか

予算を「なんとなく」で決めないこと。
「このくらいならローンが通る」ではなく、
なぜその金額にしたのかを明確にする。

月々の返済で見ている?

教育費・老後の計画を見越してる?

投資や資産形成も考えている?

根拠のある予算は、家づくりのブレーキにもなり、守りにもなります。
How:どんな暮らしをしたい?

朝、どんな光で目覚めたいですか?
どんな時間を、誰と過ごしたいですか?

間取りの前に、生活の情景を描いてください。

家事動線より、家族動線を重視したい

外とのつながりを感じたい

仕事と暮らしを分けたい

この“暮らしの絵”が見えてくると、
間取りは自然に決まっていきます。
When:いつ建てる?

「いい土地があったら買う」
「いつかは建てたい」

——そう言っているうちは、買えません。

家は「今ほしい」と思った瞬間に動くもの。
タイミングを決めることで、行動が具体化します。

いつ住みたいか?
その日付を決めた瞬間、計画は動き出します。

第4章:どの会社で建てるかを考える前に


ここまで整理できたら、ようやく「会社を選ぶ段階」に入ります。

でも、その前にひとつ大切なこと。
「こんな会社はイヤだ」を先に決めておきましょう。

連絡が遅い会社はイヤ

契約後に急に見積もりを上げる会社はイヤ

完成予定をあいまいにする会社はイヤ

パース(完成図)を出さない会社はイヤ

工期を守らない会社はイヤ

“イヤ”を明確にすることは、
「本当の希望を守る」ことでもあります。

第5章:家づくりは「考え方」で決まる
工程どおり・条件どおりに進めたいなら、
ハウスメーカーのように仕組み化された会社が向いています。

でも、自分の暮らし方を形にしたい人には、
自由設計(フリープラン)という道があります。

ただし、そこには大きな注意点も。

次回はその「フリープランの実態」を、
実際の事例を交えながらお話しします。


家づくりは、建築ではなく“思考のデザイン”です。


自分を設計できる人ほど、
家づくりの時間を楽しめます。

そして、あなたが建てるその家は、
きっと“自分を映す鏡”のようになるはずです。

家を建てる前に、まずは自分を設計する。
それが、迷わない家づくりの最初の一歩です。

家づくりを“自分ごと”として考えられるようになると、
次に訪れるのが「会社選び」よりも難しいテーマ、
それが “フリープラン”の壁 です。

「自由設計だから、思い通りにできる」
——そう思っていたのに、実際はできない。

なぜそんなことが起こるのか?
“自由”と“責任”の関係、
そして“会社の構造”と“人の柔軟性”の違い。

次回の記事では、
『フリープランの実態 ― 自由に見えて、自由じゃない理由』
をテーマに、リアルな現場の視点から解説します。

「自由にできる」と言われた瞬間から、
「自分で考えなければいけない」が始まる。

あなたが本当に“納得できる自由”を手に入れるために、
次の記事でお会いしましょう。

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藤木賀子
専門家

藤木賀子(不動産業)

スタイルオブ東京株式会社

不動産エージェントが不動産売買の仲介や住宅購入の相談に乗り、顧客の不安に寄り添いながら複雑な手続きや住まい探しを代行。「わからない」を解決しながら、アフターサービスまでワンストップで対応します。

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