人生最大の買い物で後悔しないためになぜ、家づくりで後悔する人が多いのか

藤木賀子

藤木賀子

テーマ:住宅購入




ここに一つ、不思議な調査結果があります。「家を建てたばかりの人は満足しているか?」というアンケート。家は人生でいちばん大きな買い物です。何十年ローンを組み、人生の基盤となる場所をつくるわけですから、完成した家を前にした施主は、誰もが笑顔で満足している……そう思われるかもしれません。ところが実際には、多くの方が「満足していない」「納得していない」と回答しています。ある調査(2024年/株式会社マイホム)によれば、その割合は驚くほど高いものでした。この結果を見たとき、私は「やっと社会がこの問題に気づきはじめたか」と思いました。なぜ人は、これほど大きな買い物をしたにもかかわらず、不満や後悔を抱くのでしょうか?




①情報過多の時代と「正解」を探す人々


家を建てようと思ったとき、人は情報収集を始めます。住宅展示場に行く、YouTubeで検索する、本を読む、経験者に聞く、口コミサイトを眺める……最近ではSUUMOカウンターなどで相談する人も増えました。ところが、情報はあふれているのに「正解」は見つからない。それもそのはず、住宅は千差万別であり、人それぞれ「理想の暮らし」が異なるからです。しかし私たちは、つい誰かの成功例やランキングの高い会社を「正解」と信じてしまう。けれども、それはあくまで「他人の正解」でしかありません。

情報過多時代に必要なのは「リテラシー」家づくりに絶対的な正解は存在しません。必要なのは「情報を見極める力」=リテラシーです。どんなに評判の良い工務店でも、価値観が合わなければ不満が残ります。逆に、口コミでは普通の評価でも、自分の暮らし方にピッタリ合えば、最高の満足を得られることもある。つまり「他人の正解」ではなく「自分の正解」を導き出すために、情報を選び取る力が欠かせないのです。

まとめ

・展示場・動画・本・口コミ……情報は溢れているが「正解」は見つからない。

・情報はあくまで「材料」であり、それをどう調理するかは自分次第。

・必要なのは「情報を選び取る力=住まいリテラシー」。

この力があるかないかで、家づくりの満足度は大きく変わります。

②土地・建築・予算、三重苦の現実


土地探しから始める人は特に苦労します。都市計画によって、同じ広さでも建てられる家の規模が変わる。良さそうな土地があっても、検討している間に他の人に買われてしまう。場所・予算・間取り・性能・デザイン……あらゆることを同時に決めなくてはならない。一方で土地を先に買ってしまうと、建築の予算が制約されます。建築のプランを先に決めれば、今度は希望の土地が買えなくなる。

住宅業界の「時間との戦い」土地は「待ってくれない」のが現実です。気に入った土地があっても、数日悩んでいる間に他の人が契約してしまう。一方で焦って決断すれば、後悔につながる。だからこそ、「場所・予算・建築」を同時に考えられる視点が必要なのです。私がこれまでに見てきた中には、10年経っても家が建たないご家族もいました。「いい土地がない」「いい建築会社が見つからない」と言い続けているうちに時間だけが過ぎ、結局チャンスを逃してしまうのです。
まとめ

・土地と建築、予算は密接に絡み合っている。

・土地を優先すれば建築費が削られ、建築を優先すれば土地選びが難しくなる。

・良い土地はすぐに売れてしまい、時間との戦いになる。

・「土地・建築・予算」を同時に考えるリテラシーがなければ、数年経っても家が建たないこともある。

家づくりは「選択と決断の連続」。その場しのぎの判断ではなく、全体を見渡す視点が不可欠です。

③業界の歪みと顧客の苦悩


「不動産」と「建築」は水と油家づくりにおいて、多くの人が最初に直面するのが、不動産会社と建築会社のすれ違いです。不動産会社は「土地を売る」ことが仕事。土地が決済されればミッション完了です。一方で建築会社は「建物を建てる」ことが仕事。土地が決まらなければプランを描くことすらできません。お客様からすれば、住宅ローンという金融の問題も抱えています。つまり「金融・不動産・建築」という本来バラバラな業界を一気に横断して、同時に意思決定をしなければならないのです。ここで重要になるのが「信頼できる担当者」ですが……残念ながら、誰もがそうした人に巡り会えるわけではありません。

まとめ

・不動産と建築は業界の論理がまったく違う。

・お客様はその板挟みになり、誰を信じてよいか分からなくなる。

・金融・不動産・建築を横断するには、とてつもない知識と経験が必要。

・信頼できる担当者に出会えるかどうかが、家づくりの成否を決める。

家づくりの不満の多くは「構造的な歪み」から生まれているのです。

④家づくりは結局「人」しだい


私はこの業界に30年以上います。父が建設業を営んでいたので、体感としては半世紀以上、建築の現場に触れてきたとも言えます。その中で痛感してきたのは、「家づくりは人づくり」であるということ。いい担当者に巡り会えれば、家づくりは前向きで楽しいものになります。逆に担当者が合わなければ、家は建っても心にしこりが残る。昔のように欠陥住宅が問題になる時代ではなくなりました。法規制やSNSの目も厳しい。それでも「なんだか納得できない」となるのは、突き詰めれば「価値観の相違」や「コミュニケーションの齟齬」なのです。「いい人」と「できる人」は違う多くのお客様が勘違いしがちなのは、「感じのいい営業担当=信頼できる人」ではない、ということです。確かに人当たりのよさは大切です。でも本当に必要なのは、「知識と経験を持ち、顧客の利益を第一に考えられる人」です。私はこれを「代理人として信じられるかどうか」で判断すべきだと思っています。

営業マンの現実

ここで少し、営業マンの立場もお話ししておきます。彼らも日々、膨大な業務に追われています。SNSやYouTubeで武装した顧客の質問に対応し、社内の締め切りやノルマに追われ、勉強する時間すらないこともある。つまり、お客様は「人生最大の買い物」に全力を注いでいるのに対し、営業マンは「多数の顧客を同時に抱えながら目の前のことに精一杯」というギャップがあるのです。この「温度差」が、誤解や不満の原因にもなっています。

まとめ

・家づくりは最終的に「誰と進めるか」がすべて。

・良い担当者は、顧客の価値観を引き出し、予算内で最適解を探してくれる。

・逆に担当者が合わなければ、家は建っても心にしこりが残る。

・「いい人」ではなく「代理人として信じられる人」を選ぶことが重要。

・家づくりは、建物ではなく「人間関係」が満足度を左右するのです。

④リテラシーがすべてを変える


「正解のない世界」を歩くために住宅業界に長く携わってきて、私は何度もこう感じました。――「家づくりには絶対的な正解はない」。どんなに素晴らしい住宅会社であっても、どんなに性能が高い家であっても、施主が納得できなければ不満が残ります。逆に、他人から見れば「平凡な家」であっても、本人が心から満足していれば、それがその人にとっての正解なのです。だからこそ必要なのは「リテラシー」、つまり 自分で判断する力 です。

リテラシーがある人は強い

不動産会社、建築会社、金融機関──。どの立場の人間も、それぞれの目線で最善を尽くしています。でもそれは必ずしも「顧客の理想」と一致するわけではありません。だからこそ、施主自身が「選び取る力」を持たなければならない。

まとめ

・家づくりに絶対の正解はない。

・必要なのは「情報を選び取る力=リテラシー」。

・ヒト・モノ・カネを整理することで、迷いと後悔を減らせる。

・リテラシーがある人は、営業トークや追加費用に振り回されず、自分の軸で判断できる。

家づくりの成否は、知識の多さではなく「選び取る力」にかかっているのです。

本書『住まいリテラシー』では、家づくりを「ヒト・モノ・カネ」の3つに整理しました。

ヒト編:誰に相談するか。誰を代理人とするか。

モノ編:断熱・耐震・間取り・立地。性能や仕様の正しい見極め方。

カネ編:見積もりの落とし穴、意外な出費、予算の立て方。
賢い人ほど「家づくりのリテラシー」を持っています。逆に、リテラシーがなければ情報に振り回され、営業トークに押し切られ、後悔を残すことになるのです。

⑤暮らしの言葉を持つ


「スペック」よりも大切なもの

家づくりをしていると、どうしても「断熱性能は?」「耐震等級はいくつ?」「最新設備は?」といった スペック に目が行きがちです。もちろん、これらは重要です。命や生活の快適さに直結しますから。しかし私がこれまで数えきれないほどの施主に接してきて感じるのは──家づくりの本質はスペックではなく、「暮らしの言葉」にある ということです。

あなたがどんな暮らしをしたいか

他人の成功事例ではなく、自分の価値観から言葉を紡ぐこと。「子どもと庭で過ごしたい」でもいい。「とにかく冬は暖かく過ごしたい」でもいい。「キッチンからリビング全体が見渡せる家がいい」でもいい。暮らしを言葉にすることが、正解のない家づくりにおける唯一のコンパスになるのです。まとめ

家づくりの本質は「スペック」ではなく「暮らしの言葉」。

暮らしの言葉があると、迷ったときに軸を持って判断できる。

家づくりを通して、家族の価値観を共有すること自体が、最高の成果になる。

家は「建物」ではなく「暮らしを包む器」。そこに言葉が宿ることで初めて、本当の意味での家になるのです。

あなたに伝えたいこと


ここまで読んでくださった方に、最後にお伝えしたいことがあります。それは── 家づくりで後悔しないためには、知ることと考えることがすべて だということです。昔のように欠陥住宅や悪質な業者に騙されるリスクは減りました。法規制も整い、SNSによる監視の目も厳しくなりました。それでも「100%満足できない」と感じる人が多いのは、価値観の違いや期待のすれ違いによるものです。

建築業界は日々進化しています。

DXも進み、断熱や耐震の基準も向上し、建築コストも爆上がりしています。けれども、根本的な課題は変わりません。「知っているか」「知らないか」で、家づくりの満足度は大きく変わるのです。たとえば今日、大雨が降るとわかっていれば、傘を持って出かけられる。でも知らなければ、びしょ濡れになって大事な面談に遅れてしまう。それと同じで、事前に知っていれば回避できる問題なのに、知らされないまま直面すれば、怒りや不満に変わってしまいます。だからこそ、私は本書を通じて「事前に知ってほしいこと」を伝えたいのです。


これから家を建てる人へこれから家を建てる人、いつか建てたいと考えている人。あるいは、ご家族や友人が家づくりを考えている人。どうか「情報を鵜呑みにする」のではなく、「自分の暮らしにとって何が必要か」を考えてください。そして、信頼できる人を味方にして、自分の代理人を選んでください。

『住まいリテラシー』出版に寄せてこの思いを多くの人に届けたくて、私は本を書きました。『住まいリテラシー』は、私が30年以上の経験の中で学び、顧客と共に歩む中で確信したことをまとめた一冊です。情報過多の時代だからこそ、リテラシーを持つことが一番の武器になる。この本が、あなたとご家族の未来の暮らしを守る「傘」になればと願っています。

本書から得られるもの


・情報に惑わされず、選び取る視点

・土地・建築・予算を同時に考える力

・信頼できる担当者を見極める方法

・「暮らしの言葉」を軸に家づくりを進めるヒント

最後に家は、あなたと家族の人生を包む「器」です。どんな器を選ぶかで、人生の味わいは大きく変わります。どうか、後悔のない家づくりを。そして、あなたらしい暮らしを。

ぜひご一読いただけますと幸いです。


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藤木賀子
専門家

藤木賀子(不動産業)

スタイルオブ東京株式会社

不動産エージェントが不動産売買の仲介や住宅購入の相談に乗り、顧客の不安に寄り添いながら複雑な手続きや住まい探しを代行。「わからない」を解決しながら、アフターサービスまでワンストップで対応します。

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