家を探す前に、家族で話してほしいこと〜注文住宅の建築編〜

藤木賀子

藤木賀子

テーマ:住宅購入




はじめに



家を建てる。それは、多くの人にとって、人生で一度きりの特別なプロジェクトです。

でも、私が長年お客様を見てきて強く思うのは、「家を作りたい人」と「家を買いたい人
」は、まったく違うということです。

「作りたい」というのは、家づくりに“参加したい”という意志を持っているということ。

一緒に考え、一緒に悩み、一緒にカタチにしていく。その過程自体を楽しみたいと思えるかどうか。

一方で、「おしゃれな家に住みたい」「性能のいい家に住みたい」という願いがあっても、自分で全部を決めきる覚悟や知識がない場合も多いのが現実です。

よくある失敗例は、ここから生まれます。

住宅会社が「選択肢」を次々に提示します。「この色にしますか?」「この素材にしますか?」「床材は100種類から選べます!」


――お客様は自由を与えられすぎて、どんどん迷っていきます。迷えば迷うほど、変更が重なり、設計者も選びきれず、結果として**「品番だけを拾った家」**になってしまう。そして、完成してから「なんだか違う……」という失望が生まれてしまう。

この流れを、私は何度も見てきました。

本当に「おしゃれな家に住みたい」のなら、プロに素直に相談し、提案を受けるべきなのです。


そして、「なんでもできます!」という会社を選ぶのではなく、自分たちの好みや感性をきちんと理解し、引き出してくれるプロを選ぶべきです。

この話をするとき、私はよく建築家・安藤忠雄さんのエピソードを思い出します。

安藤さんのような世界的な建築家でさえ、一度建てたものを壊して建て直すことがある。たとえば、建物が傾いたり、眺望をめぐる住民の声を受けて建て直したりする。

それほど、建築というのは“つくる前にすべてを完璧に想像する”のが難しい世界なのです。

一般の住宅では、そこまで大きな建て直しは起きにくいかもしれません。でも、「建ててみたら思っていたのと違った」「伝えたつもりだったのに、違う仕上がりになった」という小さなズレは、実際にはたくさん起きています。

建築業界には、施主と施工側のコミュニケーションミスによる裁判例も少なくありません。展示場があって、ほぼ同じものを建てられるハウスメーカーでさえ、実はたくさんのクレームやトラブルを抱えている現実もあるのです。

だからこそ、私は伝えたいのです。

家づくりで大切なのは、「何を建てるか」ではなく、**「どうやって進めていくか」**です。


どこを入口にするか――ハウスメーカー、工務店、設計事務所、建売住宅。それぞれの特性を理解したうえで、自分たちに合った方法を選ぶことが何より大切だと、私は思います。

注文住宅をひとつひとつ参加して作りたい人とは、言い換えれば**「プラモデルを一から作り上げることを楽しめる人」**です。


作る過程そのものを愛し、知らなかったことを学び、たとえイメージ通りでなくても、「なるほど、こうなったか」と受け止め、楽しめる。

そんな人にとって、注文住宅の家づくりは、きっとかけがえのない経験になります。

家づくりには、驚くほどたくさんの「決めること」があります。間取り、素材、設備、外構、インテリア、予算、スケジュール。そして、家族がいれば、当然それぞれの意見も違います。

だからこそ、まずは「自分たちはどうしたいのか」
を家族で話し合い、言葉にして整理すること。

これが、後悔しない家づくりへの第一歩です。

今日は、その第一歩として、家族で話し合ってほしいテーマと問いかけを紹介していきます。

家族で話し合うための「テーマ」と「問いかけ」


ここで紹介するのは、家を建てるときに家族で話し合ってほしい【テーマと問いかけ】の一例です。これも10個だけではありません。実際には、家族ごとに大切にするポイントも優先順位も違います。

大事なのは、テーマごとに「自分たちはどう考えるのか」を言葉にして整理することです。その積み重ねが、理想に近づくための第一歩になります。


1. 家づくりで一番叶えたいことは?

「家を建てて、どんな暮らしを実現したい?」

エージェントからのアドバイス→ 「間取りや設備を考える前に、“何のために家を建てるのか”を明確にしましょう。」

2. 建築スタイルはどれが向いている?

「ハウスメーカー・工務店・設計事務所・建売…自分たちに合うのはどれ?」

エージェントからのアドバイス→ 「安心感、自由度、コスト。何を優先するかで入口を決めましょう。」

3. 完成イメージはどこまで具体的に持っている?

「好きな家、憧れる暮らし、イメージできている?」

エージェントからのアドバイス→ 「写真やモデルハウス、SNSを活用してイメージを言語化しておくと、ブレにくくなります。」

4. 予算配分はどこに重きを置く?

「土地、建物、外構、インテリア。何にどれくらいかけたい?」

エージェントからのアドバイス→ 「建築費だけでなく、土地・外構・諸費用を含めた総予算を整理しておきましょう。」

5. 将来のメンテナンスをどこまで考えている?

「10年後、20年後も今の家に住んでいたい?」

エージェントからのアドバイス→ 「初期コストだけでなく、長期的な維持費・修繕コストも見据えた素材選びが重要です。」

6. 設計にどれだけ自由度を求める?

「ある程度パターン化されたプランでもOK?ゼロからつくりたい?」

エージェントからのアドバイス→ 「自由度が高いほどエネルギーと費用がかかります。バランスを考えて選びましょう。」

7. 間取り優先?デザイン優先?

「住みやすさ重視?見た目重視?」

エージェントからのアドバイス→ 「どちらも大事ですが、優先順位をはっきりさせるとブレない家づくりができます。」

8. 誰と家づくりを進めたい?

「担当者との相性、どれくらい重視する?」

エージェントからのアドバイス→ 「図面以上に、人間関係が家づくりの成否を左右することも多いです。」

9. 完成までにどれくらい時間をかけられる?

「急いで建てたい?じっくり取り組みたい?」

エージェントからのアドバイス→ 「時間のかけ方によって、選ぶ会社や進め方も変わります。ライフイベントとの兼ね合いも考えましょう。」

10. 万が一のトラブル時、どう対応したい?

「問題が起きたとき、どういう対応を期待する?」

エージェントからのアドバイス→ 「アフターサービスや保証制度、担当者の姿勢を事前に確認しておくことが大切です。」

おわりに



家づくりは、"モノ"を手に入れるだけではありません。暮らしをデザインする大きなプロジェクトです。

だからこそ、テーマごとに自分たちの考えを整理し、ブレない家づくりをしていきましょう。

もし、建築スタイルや家づくりの進め方について、もっと具体的なアドバイスがほしい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

一緒に、あなたたちらしい家づくりをサポートします。

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藤木賀子
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