親の家を売る!査定をするときの注意点
父の土地を相続したけど売れない。どうしたらよいのか?
最近よくある相談です。
今日は千葉県での事例をお話ししたいと思います。
相談者はご主人と母の3人家族で、昨年父が亡くなり、その遺産である土地の処分を希望していました。話を聞くと、その土地は長年放置され、雑草管理が面倒なため、父が生前近隣住民に無料で駐車場として使用してもらっていたとのこと。
使用貸借の契約書は存在していましたが、既に期限が切れており、相談者である娘さんが使用者に電話をしてみたところ、その電話は現在使われていない状態。
近所の不動産屋にも相談したが、途中から音信不通になったといわれました。
Googleマップで場所を確認すると、確かに数台の車が停まり、一部は家庭菜園にも使われている様子。あたりは住宅街ではある、最寄駅から車で30分近く、千葉県といってもなかなか簡単に売れそうな感じではない土地だと思いました。
まずは物件調査を行うことにして、依頼を正式に受けることにな
早速、謄本や公図などを取得し、土地の詳細を確認してみると、昭和46年に売買された市街化調整区域内にある土地で、農地と雑種地の2筆に分かれていることがわかりました。これは正直売るのが難しいかも・・。
実際に現地を訪れると、畑の真ん中に昭和の香りが漂う古い分譲団地のような雰囲気で、周辺にも空き家もちらほら。
昭和40年代はベビーブームですからねぇ・・。
こんな駅から離れた畑もこうやって開発され、将来は価値があがると思っていたのでしょう。
まさか、少子化になるなんてその当時は誰も思わなかったはず。
このような場所に行くと少し悲しい気持ちになりますが、この雰囲気をみると売れる気配が全くしない。
とりあえず駐車場と家庭菜園の利用者を突き止める必要があるため、私は隣の家を訪ねました。幸い隣地の方は在宅で、親切に対応してくれました。その家の方は使っておらず、すぐ近所に利用している人がいると教えてくれました。
その方を訪問すると、高齢の女性が出てきて、「所有者不明の土地で、そのままにしておくと草も生えるので、近所の人と話をし、車を停めているだけ、すぐにどかせる」と快く話してくれました。
畑も同様、駐車の問題は簡単に解決したのですが、問題はこの土地をどう処分するか。
売主の許可を得て、まずは隣近所の住民に(無料にすると贈与税の問題が発生する可能性があったため)「1,000円」で土地を買い取ってもらえないか提案することにしました。
しかし、現在の使用者は自分も高齢で娘もここには戻ってこないのでいらない、他の方も使わないと、予想通りの答えが返ってきてしまいました。
国庫帰属制度を考える
売れないとなれば国庫帰属制度を検討してみる。
この制度は令和5年から施行されたもので、不要な土地を国に帰属させることができる仕組みです。ただし、利用するにはいくつか条件があり、まず土地の境界線を明確にするための確定測量が必須。
確定測量とは、隣地所有者との立ち会いを行い、境界線を明確にし、境界標を設置して登記する作業。
また、引き取ってもらうには「管理が容易でない土地」は対象外になるため、草刈りやゴミの処理が継続的に必要になる土地は引き取ってもらえないことが多い。さらに手続きには申請書類作成が必要になり、申請書類を素人が作るのはなかなかハードルが高い。
専門家の調査報告書なども必要であり、弁護士や土地家屋調査士に依頼すると最低でも諸経費で100万円以上の費用がかかることが一般的。
土地の引き取り業者
最近では、土地を有料で引き取るサービスも数多くでてきています。次は土地の引取り業者に聞いてみました。
しかし、この土地の農地部分は農地法による転用許可が必要。農地転用許可とは、農地を宅地などの他用途に変更する許可であり、許可の取得には土地利用の目的が明確であること、その地域での用途が適合していることが条件です。
土地の引取り業者は引き取って家を建てるわけでもない。農地を転用する理由が認められないため、許可はほぼ下りない。
結果的に業者も引き取りは難しいと判断しました。
ちなみに土地の引き取り業者は有料のお金目当てに引き取りした土地の管理や転売先を精査しない悪質な業者もあるので注意が必要です。
私は信頼できるルートから紹介され、その会社の志なども確認した上で、相談しています。今回は農地であったため引き取れてなかったですが、引き取れた場合は120万円のコストがかかると。
近隣の民家があると、管理費が多くかかるため、人里離れた山林などよりも支払うコストは高くなるそうです。ですからあまり安い引き取り料金で住宅地である場合はお気をつけください。管理を怠るかもしれませんので。
誰も土地を引き取ってくれないとなれば、そのまま放置しておく方法もあります。
ただし、この場合でも固定資産税は年間約2万円ほど発生します。
金額自体はそれほど大きな負担ではないですが、相談者の家族はお子さんがいないため、自分たちが亡くなった後に甥や姪がこの土地を相続することになります。
無用な負担を親族に残すことへの罪悪感と将来的なトラブルの予感があり、多少費用がかかっても手放したいということになりました。
近隣の登記簿謄本を入手し手紙を書く
手詰まり感が漂っていましたが、諦めず少し離れた近隣住民にもダメ元で手紙を送り、土地購入の希望を募ることにしました。
すると数日後、思いがけない連絡がありました。数件離れた戸建てを所有するパキスタン人の男性です。
彼は近所でカレー屋を営んでいて、外国人という理由から賃貸住宅を借りるのが難しく、安価な中古住宅を購入し、従業員の宿舎として利用していたという。そのため駐車スペースが必要で、この土地がぴったりだったそう。
最終的に、登記代も含めて10万円以下なら土地を購入したいという申し出があり、もちろん、お客様は喜んでお受けすることにしました。
農地転用の手続きや売買のお手伝いは当社で行いました。
農地転用には買主にもご協力いただく必要があり、当社としては少々苦労してしまいましたが、誰も買わない土地を引き取ってもらえただけでも奇跡的な幸運だと言えるでしょう。
お客様は費用がかかりましたが、国庫帰属制度や土地引き取り業者に支払う価格よりも抑えることができたので、大変喜んでいただけました。
今回のケースは、売れない土地の典型的な問題と、それを突破するための工夫、そして外国人住民が土地問題を解決してくれるという現代的な展開が非常に印象的なケースでした。
親御さんが大昔に子供に残せる将来の価値として購入したはずの不動産が、いまや負動産になってしまったというケースはまだまだあります。
今回のようにお金を支払ってでもなんとかしたいと思えるのであれば良いですが、お金がかかるのは嫌・・となるとどうすることもできません。厄介なのは、不動産は査定しようと思えば査定ができます。査定は固定資産評価格からも算定できるからです。
地場の不動産業者は現地も確認せずに、査定だけをして、とりあえず販売のサイトに載せておきましょうか?というかもしれません。固定資産評価や路線価はマイナスにはならないので、査定はプラスの金額が出るのです。
結果、多少のプラスを期待して販売をしてもまったく反響もなく3年経過・・!
なんて話もよくあるのです。
ですからまずは物件調査です。売れるのか?売れないのか?売れるなら早く売る。売れないならこの先どうするかを決める。まずはそんなところから始めてみるのが良いと思います。
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