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Mybestpro Interview

うつ病やパニック障害、PTSD、ストレスなど心の問題に幅広く対応

認知行動療法やEMDRなど科学的な技法を用いる臨床心理士

山本貢司

田園調布カウンセリングオフィス所長 山本貢司さん
田園調布カウンセリングオフィス所長 山本貢司 仕事風景

#chapter1

悩みや症状を聞き取り、心のメカニズムを整理

 田園調布カウンセリングオフィス所長の山本貢司さんは、認知行動療法をはじめ、EDMRやブレインスポッティングなどの技法を用いて心の問題をケアする臨床心理士です。オフィスには、うつ病やパニック障害、強迫性障害と診断された人や、職場のストレスに悩む人など、さまざまな問題を抱える人が訪れるのですが、薬物治療を受けても症状が治まらない人の背景には、何らかのトラウマがあると言います。「たとえば休職、復職を繰り返している人は、職場で受けたストレスがトラウマ化しているかもしれませんし、もともと持っていた心の傷が原因なのかもしれません」

 山本さんは、かねてから心理学に興味を持っていたのですが、別の道を進みました。しかし27歳の時、脳腫瘍が見つかったことが、人生を変えるきっかけとなりました。「幸い早期に発見できたため、病気は治りましたが、もし明日死ぬかもしれないと考えたら、このままの人生では納得できないと思いました。そこで臨床心理学を学ぶため、退職して大学院に進学しました」

 カウンセリングでは、まず「気分が落ち込む」「眠れない」「体が重い」などの症状を聞き取り、問題を整理します。それを認知行動療法の基本的な疾患モデルとして知られるABC図式で図示したり、スキーマ療法や自我状態療法などを応用して、オリジナルな心理的問題のメカニズムを図に描き出して理解を深めます。目に見えない問題を「心の地図」に描き出し、それをガイドにして適切な技法を用います。たとえば、スキーマ療法でインナーチャイルドを癒したり、トラウマの記憶をEMDRで処理します。

#chapter2

生育過程の凝り固まった思考のパターンと行動を変える

 オフィスを訪れる方たちのトラウマの原因としては、幼い頃の厳しい躾やいじめなど、生育過程の心的外傷体験に起因することが多いそうです。「たとえば虐待とまではいかなくても、親の一方的な関わり方は子どもに無力感を体験させ、そうしたストレスが積み重なるとトラウマ化します。そして大人になって社会に出た時に、何らかのきっかけによって生育過程で身につけたトラウマ反応や対処パターンが再現されますが、多くの場合、その反応や対処パターンは生育過程と違う環境では通用せず、社会不適応に陥ったり、心理的な問題が生じます。動物は外敵に出会った時、闘ったり逃げたりしますが、どちらもできない場合、凍りついたように動けなくなります。同じように人間も、ストレスが重なることで『何をしてもムダ』という無力感や絶望感に襲われて、頭が真っ白になったり、感覚がマヒしたり、記憶が抜け落ちてしまうことがあるのです。これが隠されたトラウマです」

 問題が整理・図式化され、症状のメカニズムがはっきりと見えると、自分自身で「この気持ちを癒してあげよう」「このパターンは修正しよう」と解決策を行動に移すことができます。凝り固まった思考のパターンや行動を変え、無力感が修正されていくにつれ、「自分の心は変えられる」という自己効力感が次第に芽生えてきます。

そうして自分で自分をコントロールできるようになると、失われた感覚や感情が戻ってくるのですが、同時に意識から切り離していたトラウマが現れる危険もあります。しかし、自己効力感が育っていればトラウマに圧倒されずに、それを処理することができます。

田園調布カウンセリングオフィス カウンセリングルーム

#chapter3

ストレスの少ない方法で問題解決、そして素直に生きる

 たとえば、EDMR(眼球運動による脱感作と再処理)という技法では、目を左右に動かすなど身体に左右対称の刺激を与え、脳内の情報処理を活性化させることでトラウマを処理します。また、最近広がりつつあるブレインスポッティングという技法では、ある一点を見つめることで、脳の特定の部分に働きかけ、激しい恐怖や身体的な苦痛などのトラウマ反応を軽くします。これらの技法は従来の心理療法や薬物療法よりも効果的で負担が少なく、時間もかからないのが大きなメリット。PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療法として、その有効性が科学的に実証されている認知行動療法とともに、山本さんが多数実践している技法です。

 幼少期からのトラウマを抱える人も、仕事や人間関係でストレスを受けた人も、カウンセリングで問題を整理すると解決の方向性が見えてきます。そして、対処方法を知り、自分をコントロールするスキルを高めると、悩みや症状が解決するだけではなく、幸せに生きることができるようになります。社会の許容度が低下して、異質なものを排除する傾向が高まるにつれ、心の問題は隠され見えにくくなっていますが、そんな現実を乗り越えるためにも、自分に素直に生きる力が大切だと説く山本さん。「つらい体験をした人が、ものすごいスピードで失った時間を取り戻し、力強く生きていく。そのようなことが、幾多もありました」と話す姿は頼もしく、訪れる人を安心させます。

(取材年月:2017年3月)

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山本貢司

認知行動療法やEMDRなど科学的な技法を用いる臨床心理士

山本貢司プロ

臨床心理士

田園調布カウンセリングオフィス

主に医療機関での心理カウンセリングで認知行動療法やEMDRなど科学的に実証された技法を多数実施。その中で回復困難な症状に潜むさまざまなトラウマを見出し、トラウマケアの専門性を高めた心理療法を行う。

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